【スマホ小説】ボス 1

「ねぇボス〜、前から思ってるんだけどさ〜、ボスって仇名だと思ってたけど、本名なの?だってスジンさんもそうだし、お友達は皆んなボスって呼んでるでしょ?」と常連客の清水路子はちょっとろれつの回らない口調でカウンター越しに蝶ネクタイ姿の男に声をかけた。

ここはBAR「花郎(ファラン)」。新大久保駅からほど近い雑居ビルの地下にある小さなBARである。店はカウンター10席のみのこじんまりとした作りである。店内は間接照明のみで薄暗い。

カウンター後ろの壁はガラスの棚になっていて一面酒のボトルで埋まっている。その中にはScotchの銘酒「バランタイン30年」やバーボン「イーグルレア・シングルバレル」等の希少酒も見える。琥珀色や紺碧、また透明なボトルが天井からの間接照明の光を浴びて輝いている。

カウンターは加工された銅板が敷かれ重厚感を醸し出し、座席の上から小さなスポットライトが手元を照らしている。薄暗い店内だが、その灯りがグラスに注がれたカクテルを引き立たたす。そして壁には、似つかわしくない綺麗な女優の写真が額に入って飾られている…

ボスと呼ばれた男は、スラっとした体型だが思いのほか肩幅は広い。寡黙に見える太い眉毛とは対照的に少し垂れた目尻が人の良さを表している。筋の通った鼻の下には小さめの口が薄笑いを浮かべている。

「路子ちゃん、こいつは必要以上の事は喋らないんだ。そんなんでよく客商売が出来たもんだよ。全く…」「じゃあスジンさんが教えてくれる?」スジンを見て聞いた。

スジンはボスの顔をチラッと見て喋り出した。「本名がチェボッス(崔福寿)だからボスになったんだよ。深い意味はないよ」「キャハハ、なんだ〜そんな理由なんだ〜」

口髭を蓄えたポッチャリ顔のスジンはニヤリと笑いながら「ボスとは小学校からの付き合いだから大体の事は知ってるぞ」と人の良さそうな細い目をより一層細くして笑った。「へぇスジンさん、じゃあ教えてよ」と路子はイタズラっぽく笑った。

「ボスはこう見えても高校時代はラグビーの選手だったんだぞ…」スジンが話そうとした時、話を折るようにボスが「テス、ちょっと用事に行って来るから店、頼むな」と隣でグラスを拭いているガッチリした体には似合わない小さな顔の男に声をかけた。そしてスジンを見ながら「あまりくだらない事言うなよ」と片目をつぶって言った。

「何だよ、逃げんなよ」とスジンがボスの背中に声をかける。隣で路子も「あ〜ボス、ズルいんだ〜」と追い討ちをかける様に声を上げた。ボスは聞こえなかった様に勝手口のドアを開けて静かに出て行った。

「ねぇねぇ、それで?」と路子はスジンを急かした。「え〜と、どこまで話したかな?」「高校はラグビー部って所よ」「あ、そうだったな。ボスは昔から何をやらせても器用にこなしてたなぁ。だからどのポジションも無難にこなすオールランドプレイヤーだった。

飛び抜けた物はないけど、難しいプレーもさらりとこなす、安定したプレーヤーだったよ。奴に任せたら安心…て言うか」「あ〜、何となく分かる。落ち着くのよね、彼を見てると…」と路子は妙に納得した。

「それで、ボスは結婚してるの?家族は?」「う、うん…何と言ったら良いのかな」「何?何か訳ありなの?」と路子が聞き直す。

しばらく考えた末にスジンは「ふぅー」と長い息を吐き「もう時効だからいいか〜」と自分自身に言う様につぶやいて話を続けた。

            続く

3 COMMENTS

直木賞~

んで? んで~? 気になるなぁ~😆
第一回目って、わくわく~ ドキドキしますね~😊
楽しみが増えたぁ~💓💓💓 ありがとう👍

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バカラのグラスとまんまる氷

店名が「花郎」なので すらっとした体格のボスは、きっとパク・ソジュン似のイケメンなんだろうなぁ〜と勝手に想像してしまう。それだけでワクワク♡ドギドキ♡www
続きが楽しみです。
作家さん、応援していますよ‼️(^^)✌️

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