10月は秋の気配

【スマホ小説】ボス 7

「なぁ、ヒャン。次の休みは映画観に行こうか?」「うん、良いよ」ソヒャンは笑顔でボスの顔を見た。「その後はちょっとお洒落なお店行こう」「うん」とまた笑顔。

「あのさぁ、ヒャンは何でも良いよだね」とボスはヒャンの顔を怪訝そうに見た。ソヒャンはちょっと下を向いたがまた「うん」と笑った。

「例えばさ、映画を観に行こうって言ったら「何の映画?」とかさ、お洒落なお店って言ったら「レストラン?」とかって聞くだろ?でもヒャンはいつも「うん」て言うだけだもん」とちょっと咎める様に言うと、ソヒャンは目を伏せながら「だって、ボスが行きたい所は私も行きたいし…ボスと一緒にいれるだけで…私はうれしいんだもん…」最後は消え入る様な小声でこう言った。

その言葉を聞いたボスは、堪らなく愛おしく思い「わかった。悪かったよ。ゴメン」とソヒャンの顔を見つめた。

「2人は同級生皆が羨むカップルだった。一度はボスがラグビーの練習で足の怪我で入院した時は、ソヒャンはそれこそ献身的に世話をしたんだ。場所が「岸病院」と言う学校の近くだったから、朝に病院を訪ねて、帰りも病院に寄って、病院食はマズいからと手作り弁当も持って行ってたな〜。まあ、毎日昼時間は階段の踊り場で弁当渡してたけどな、羨ましかったよ。」とスジンは話を続けた…

高校を卒業した2人はそれぞれ朝大、歌舞団と別の進路に進んだが、交際は続いた。ボスが大学を卒業してパチンコ店に進路が決まって大阪に行った時も、毎週休みの日には会いに来た。

まだ「シンデレラエキスプレス」と言う名前もない時から、2人にとって日曜の夜8時30の東京駅は聖地だった。走り去る新幹線が涙で曇る中、赤い追尾灯が見えなくなるまでソヒャンは手を振り続けた。そんな2人にとって遠距離恋愛は何の障害でもなかった。

そしてボスがパチンコ店を辞めて東京に戻り、先輩の紹介で不動産業で働く様になってから2人は結婚した。

「へぇ、結構あったんだねぇ。遠距離恋愛は2人にとって何の障害でも無い…か。カッコいいね。それで?」路子が先を急かした。

「結婚式はそれこそ同級生がたくさん来て盛大に盛り上がったんだよ。何と言っても誰もが羨むカップルがようやく結ばれたんだから…幸せそうな2人の笑顔が眩しかったなぁ。でもね…」と言ってスジンは目を伏せた。

結婚後も2人は仲の良いおしどり夫婦だった。子供は女の子1人だが大変な難産の上に授かった宝物だった。バブルが弾け、不動産業も大変な時だったが、娘のオギ(香玉。ボスがソヒャンの一文字を付けた)の笑顔に励まされ頑張った。

オギが7歳になった時、ソヒャンは兵庫県に住む親戚の子が成人になると言う事で、お祝いに行く事になった。

「ねぇアッパ、オギは置いて行くわね。オギも小学生になったから、自分の事は自分で出来ると思うし」「おう良いよ。連休だし…な、オギ。アッパと一緒に留守番しような」「うんわかった。オギ、アッパのご飯も作ってあげるね」「そうか〜オギもお姉ちゃんになって来たな。えらいぞ」とボスはオギの頭を撫でるのだった。

そしてソヒャンは神戸に向かって出発した。

          続く

1 COMMENT

じゃんきゅう

もう~ 幸せを絵にかいたようなカップルですね~👍
で、朝大を卒業して~ いきなり「パチンコ」と来たので、えっ 安易💦と感じましたけどね~😢
でも、その後、ソヒャンオンマの兵庫県での変な事件なんて期待していないですよ~🤦‍♂️ でひ、ハッピー ハッピーな流れを期待します~😊
んで? んで? 次はどうなるの? うきうき

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