介護のジカン―姑編⑲

私が姑の看護をしていると、看護師からナースセンターに呼び出された。
看護師:金さん、最近点滴の管を取っちゃうんですよ。
私:はあ
看護師:病院側が身体を縛るとことは禁じられているんだけど、身内ならかまわなんです。
私:はあ
看護師:それでね。金さんの右手を紐かなんかで固定してもらえませんか?
私:はあ
看護師:このまま点滴ができないと大変なことになっちゃうのでね。
私:はあ
この頃になると、もう何ごとにも動じなくなっている。いちいち反応するのも面倒くさい。

ベッドの柵に姑の腕を縛り付ける。姑の抵抗は半端ない。可哀想で見ていられないが、あえて見ないふりをする。これも血がつながっていないからできる技かもしれない。私はなんて冷血なのだろうかと自分を責めながら、静かになった姑に目をやる。

姑はさっきの抵抗がウソのようにおとなしい。そして子供のようにしゃべりだした。
姑:おねえさん、手が動かないの。これ取って
私:ハンメ、ごめんね。これはハンメのためだからガマンしてね
姑:えーん、えーん
姑が子供のように泣き出した。

だが、次の瞬間、姑の口調が突如変わった。
姑:おい!こんなことをしやがって覚えてろ!お前、早く取らないと容赦しないぞ!
私:?!
姑が凶暴な人間にひょう変している。声色も低くなっていて、まるで怖いおじさんだ。

その後も、上品な口調になったり理詰めで攻撃したり、子供やおじさんに戻ったりと、いろんな人格で訴えてくる。こうなると、もう何が何だか私にも分からない。表情も声も七変化する姑の様子をボーっと眺めていながら映画「エクソシスト」を思い出す。悪霊退治ではないけれど、もしかしたら人間の体内にはいくつもの人格が本当に存在するのかもしれない。