【経済】中国の不動産バブル崩壊

皆さんもニュースでご存知なことだとは思いますが、いま中国の不動産不況が深刻な状況に陥っています。中国の不動産大手の「恒大こうだい集団」が経営不振に陥り、中国各地で建設中のマンションの工事が止まったままになっています。

9月28日には恒大集団の会長が「強制措置」を受けていると発表されました。犯罪に関わった疑いで拘束されたとみられています。

「恒大」という名前は「恒つねに大きくなろう」という意味が込められています。この巨大企業は2016年には売上高で、世界最大の不動産企業に上り詰めたこともあります。近年も不動産売買販売面積で中国二位。2020年の売上高は日本円で約8兆5000億円にも上っています。従業員数は一時は20万人に上りました。

それが今回、アメリカで連邦破産法第15条の適用を申請したのです。ついに倒産かと思われましたが、実はちょっと違っていて、この条文は、外国企業がアメリカ国内に保有する資産を保全する手続きを定めたものなのです。

恒大集団はアメリカ国内にも投資をしてきたので、それなりの資産がある。それをカタに差し押さえられるのを防ごうというものです。借金で首が回らなくなると資産を取り上げられてしまうので、いったん借金の返済を猶予してもらおうという仕組みです。

中国で2番目の不動産会社「恒大」が苦境に立った結果、それでは一番手は大丈夫なのかという声が当然上がっています。それが「碧桂園へきけいえん」です。こちらは8月初頭に期日を迎えた社債の利払いが実行できませんでした。借金返済どころか、その前段階の利子の支払いもできなくなっているので事態は深刻です。

碧桂園は、中国国内の地方都市マンションの建設を進めてきましたが、大半のマンションは、完成前に売買契約を結ぶ仕組みになっています。その結果、マンションの代金は払ったのに、建物はまだ完成しないという物件が続出し、大金を支払った人たちは怒りを爆発させているのです。

そもそも中国の不動産は日本と異なり、土地そのものを保有することができない。土地は国有財産で、土地の使用権だけが売買できるという仕組みになっています。それでもマンション建設が進めば、建設資材が飛ぶように売れるので、各省庁を牛耳る共産党幹部たちは不動産ブームを煽りました。自分の省でのGDPの数字をよくし、中央から目をかけてもらえれば、出世の道が開けると期待したからでしょう。

さらに、2008年のリーマンショックに際しては、中国は金利を引き下げました。この結果、銀行からお金を借りやすくなり、中国国内の不動産ブームに火がつきました。

しかしこの状況は、過去の日本を彷彿ほうふつとさせます。1980年代後期、日本は円高不況に苦しみ、日本銀行は金利を大幅に引き下げました。その結果、お金は借りやすくなり、土地を買ったり株を買ったりする人が増えたことで、不動産価格も株価も上昇し、結果バブルが生まれました。

バブルで浮かれた人が多かった半面、その一方で真面目なサラリーマンからは、不動産価格が値上がりしてマイホームが持てなくなるという不満が高まり始めます。そこで当時の大蔵省が始めたのが不動産の総量規制でした。金融機関に対し、不動産を購入するためにお金を貸してほしいと言ってくる企業や、投資目的の個人に安易にお金を貸さないようにすることでした。その結果、不動産価格が暴落し、不動産を担保に資金を貸していた金融機関は多額の不良債権を抱え込むようになり、経営破綻が相次ぎました。