春のうららかさを感じよう

【投稿】大学病院での出来事

先日、私は都内の大学病院の廊下を、アボジと一緒に歩いていた。アボジは年に1回の診察を受けている。今年も何の問題もなく、検査をこなして歩いていると、廊下の先から、ものすごい怒鳴り声が聞こえてきた。中年の女性の声だ。

その怒鳴り声は、めったに耳にしないであろう怒鳴り声で、静かな病院の廊下は怒鳴り声の反響で響き渡った。廊下を行く人は驚き、さりげなく女性を見ている。しかし彼女は、見られていることにさえ気づかないようだった。それほど怒っていて、病院の窓ガラスを震わせるほど、怒鳴り散らしていた。

あまりの大声に、彼女の怒りの理由が全部わかった。彼女は80歳代らしき母親を怒鳴っていたのだ。世間ではよく「嫁より娘の方が怖い」と言うが、あそこまで怒鳴り散らすのは多分娘であろう。娘は高齢の母親に付き添って、この大学病院に来たのだ。娘は母親に「私が会計を済ませてくるから、このソファーに座って待っててね」と言ったのだろう、もちろん普通の声で。

母親は言われるままに、待合室のソファーに座った。広い病院だが、非常に混雑していて、会計も薬をもらう窓口もいっぱいで、ソファーには座りきれず、立っている人が多かった。 当然、会計が済むまで時間もかかる。

やっと済ませて娘が戻ってくると、ソファーに座っているはずの母親はいなかった。娘は慌てたのだ。どこへ行ったのか。待合室の前にはエレベーターがある。それに乗って行ったのか。トイレに行ったのか。また、外へ出て行ってしまったのか。 おそらく娘は、顔色を変えて探し回った。

だが見つからなかったのだと思う。 探し回った末に、病院の職員の手を借りたのだろうか。とにかく母親と会えた。

「 何で動いたの。なんで、えっ、どうして!言って!」

母親は娘が怒っているのはわかるが、状況を理解していないようだった。 怒鳴り散らされても表情を変えず、無言である。

「 あんなに 動くなって言ったでしょ」
「…」
「 何でわかんないのッ!」
「…」
「 一人じゃ何もできないでしょ、 もう勝手にして!」
「…」
「 私帰るから!」

娘は母親を置き去りにして一人で荒々しく行ってしまった。母親は無言のまま立っている。すると娘が突然、大股でUターンをしてきた。そして母親に詰め寄った。

「 何で動いたの。なんで!えっ!」

なんと、また娘は母親を置き去りにして、怒りの足取りで行ってしまった。しかしその言葉が終わらないうちに、娘はまたUターンをしてきた。 怒りは全く収まらず大声で叫ぶ。

「 車椅子に乗って!勝手に動かれちゃ迷惑なの!車椅子!」

娘は母親の手を乱暴に引くと、車椅子置き場の方へと去って行った。母親は一言も発することなく、この状況を理解していないように見えた。

私は、娘さんの気持ちも少しわかるような気がした。娘さんはすごく心配をし、病院の外は交通量の多い大通りだし、車にひかれたんじゃないかとか、会えてホッとしたのが爆発したのかもしれないと思った。

もしかしたら母親は、これまでに徘徊することがあったのかもしれない。でも娘の心配と怒りもわかるが、それでもあそこまで怒鳴らなくてもいいのではないかと思った。

半面、私も年老いたアボジやオモニの生活スタイルや動作などに対して、叱責したり野次ったりしたことはなかっただろうか? 年寄りと暮らすことって、ああいうことなのかもしれない。思いがけないことがいくつも重なり、生活スタイルも時間も全く違うし、イライラして心配が大きくなる分、怒りの爆発も大きいのかもしれない。

でも、そういう私も分かっていた。あの娘がその後、冷静になった時、相当落ち込むだろうということだった。年寄りが親であろうと他人であろうと、抵抗できない弱い相手をいじめたような気になると思う。

「もう何度言わすの!」とうんざりした顔をして怒っていた娘は、その後、自宅では落ち込むのだ。

 でも年寄りの多くは、そんな若い娘の落ち込みに、多分気づかないと思う。 

2 COMMENTS

やさしく~ねっ👍

あ~ あ やだやだ💦 こう言う話は、あまり耳にしたくない👂💦
娘さんの気持ちも分からくも無いけど、もう少し冷静に学習して欲しいなぁ~😢
認知症が無くても、老人は子供返りすると言われるもんね~
小さい幼児に接するように~ 優しく~ やさしく~💕
せっかく作り上げてきた親子の、良い思い出が、台無しにならないように~😞

大大大尊敬

両親を比較的早くに亡くしたので親の介護等は想像の範疇ですが、自分なら優しく接する事が出来ただろうか、いつか行く道だと理解する事が出来たのか。
自分の親ならともかく、よそのお年寄りに優しく出来るのか。自信が無いので介護の仕事につくのはやめています。
優しく接してくれるヘルパーさんを見ると大尊敬します💕

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