1本の樹にもー新米教師奮闘記⑱

学校に活気が戻ってきた。各教室では真っ黒に日焼けした学生たちが久しぶりの級友との再会に声を上げて喜び、それぞれの夏休みの報告に余念がない。運動場では初級部の学生たちが遊具に乗ってはしゃいでいる。さあ、2学期の始まりだ!

どこの学校でも2学期は忙しい。和歌山も例外ではない。体育大会、芸術競演大会、運動会、統一試験、競演試験などの例年の行事に加え、今年は新校舎建設10周年の記念行事が予定されている。教師も学生も大忙しだが、ヒョングにとってはその1つひとつが新鮮であった。

2学期最初の行事は中央体育大会である。毎年9月初旬に東京で開催されるこの体育大会は、日本の公式試合に出られないウリハッキョの学生たちにとって自分たちの力を試す貴重かつ数少ない場である。高校球児が甲子園を目指すように、ウリハッキョの学生たちはこの体育大会を目指して日々厳しい練習に励んでいる。今年も中級部の男女バレー部がその切符を手にした。

いよいよ中央体育大会に出発だ。引率はバレー部の担当である教務主任とチソン先生、それにチョンファと女子教員1名。移動手段は学校のマイクロバス。その運転手としてヒョングも同行する。ヒョングは4月の赴任当時に既に大型免許を取得していた。主に初級部の通学バスを運転していたので遠出のバス運転は初めてである。東京までの道のりは遠く、1人では大変なので教務主任と交代で運転することとなった。

「ヒョング先生、高速は慣れてへんやろうから、無理せず行こうか? ワシが主に運転するから心配すなよ」と言いながら運転席に乗ろうとする教務主任を押しのけてヒョングは運転席に座った。「いや、先生は学生指導があるじゃないですか。僕が運転しますから、任せてください」そう言うと、ヒョングは力いっぱいエンジンをかけた。さあ、出発だ!

学父母と先生たちが生徒たちを見送り健闘を祈る。和歌山初中の学父母、学生やOB、先生たちの期待を乗せてバスは一路東京へと向かった。