春のうららかさを感じよう

1本の樹にもー新米教師奮闘記㉚

「誰も先生のこと、担任だと思ってへんし」「学生をなめたらあかんで」…
ここ数日、頭からこの言葉が離れない。(俺は今まで何をやってたんだろうか…)

4月に教員になってから半年、自分なりに頑張ってきたつもりだった。学生たちとも友達のような良い関係を築いていたと自負していたし、学校からもある程度信頼を得ていると思っていた。だが、それら全てが自己満足でしかなかったことに今さら気づかされたヒョングは、授業に出るのもためらうほど打ちのめされていた。

「ヒョング先生、コーヒー」落ち込んでいるヒョングに声をかけたのはチョンファだった。チョンファはヒョングの前にコーヒーを差し出すと、ヒョングの顔をまじまじと見ながら言葉を続けた。「ヒョング先生も笑わないことがあるんですね。先生にそんな顔似合いませんわ」「…」「何かよう分かりませんけど、クヨクヨ悩んでもしかたありませんやん、そういうときは当たって砕けろちゃいますか?」

ヒョングは自分を元気づけようとしてくれるチョンファがありがたかった。「そうだな、チョンファ先生の言うとおりだ。悩んでいても答えなんか出るはずないよな。」ヒョングはチョンファに口元だけで笑いを返した。(当たって砕けろか… そういえば、俺、今まで生徒たちに面と向かって当たったことがなかったな…)

放課後、ヒョングはクラスの生徒たちにある提案をした。「私がこのクラスを担任して半年が過ぎたが、君たちと本音を言い合ったことがなかったように思う。そこで、今から私に対してやクラスに対して思ってることを本音で言ってくれないか?」ヒョングの突然の言葉に生徒たちは、初めはキョトンとしていたが、すぐにミョンジャのことだと気づいて意見を言い始めた。

口火を切ったのはエミョンだった。「先生はミョンジャの様子がおかしいと思わへんかったんですか? それは担任としてどうなんやろ?と思います。他の先生なら絶対気がついてたんとちゃいますか?」と言うとぶ然として座った。男子たちは顔色を変えてヒョングの顔を見た。

続いてミョンジャが立ち上がった。「私は高校に行きたいんです。でも親は働け言うし… 先生は話聞いて言っても無視するし…こんなこと誰に相談すればええんですか? 少しはうちの話を聞いて!」悲痛な叫びだった。ヒョングは無言で意見を聞いていた。重苦しい沈黙が教室を包む。

沈黙を破るようにソンスが手を挙げた。「ミョンジャの言うことも分かるけど、ヒョング先生は無視したわけじゃないと思う。運動会や公演で先生が忙しかったのは、みんなよう知っとるやろ。だから、ミョンジャは今からでもしっかり相談して方法を考えたらどうやろ」

ニョモが続く「ヒョング先生は少なくとも無視する先生とは違うで。ちゃんと話してみたらええんちゃうか?」 男子たちの冷静な意見にミョンジャや女子たちの気持ちも少し落ち着いた。

ヒョングは学生たちの顔を見ながらきっぱりと語った。「ミョンジャには本当に悪かったと思う。心から反省してる。これからはもっとみんなとコミュニケーションを取っていきたいので遠慮せずに何でも言ってくれ」ヒョングの真情の吐露だった。