1本の樹にもー新米教師奮闘記㊴

日曜日の朝、白浜駅に3人の姿はあった。朝の起きがけを狙うようにチャイムを鳴らした。「ピンポーン」ガチャッと扉が開いた。「アンニョンハシムニカ。 朝早くからミアナムニダ」不意打ちを食らって驚くミョンジャの父親に向かってヒョングが挨拶をした。「あら、ソンセンニム、まあ、ミョンジャまで…朝早くからどないしはったん? 」ミョンジャの母親がとりあえず中に案内してくれた。

向かい合って座るミョンジャの両親とヒョングら3人。神経戦が始まった。しばしの沈黙が流れたあと、ヒョングが妙に明るいが強い意志の込もった声で話を始めた。「アボジ、突然お邪魔してミアナムニダ。電話ではらちが明かないので来てしまいました」

父親は早朝の招かれざる客をぶ然たる表情でにらんでいる。「アボジ、今日は返事をもらいに来ました。ミョンジャの進路について考え直してもらえませんか?」父親はなおも黙っている。

「アボジ、朝から悪い思たけど、一生の問題やし、話をしたくて来てん」ミョンジャがいたたまれなくなって口を開いた。「この前は言わんかったけど、みんなは高校に行くいう目標を持ってるけど私は、私は空っぽやねん…。私もみんなと同じように高校に行きたいしバレーも続けたいねん」

すかさずヒョングが援護射撃。「アボジ、この問題はミョンジャにとって大切な問題なんです。何とか高校に行かせてもらえないでしょうか?」アボジは目を閉じてじっと聞いている。

ミョンジャは目に涙を溜めて話を続けた。「アボジ、私は初級部からずっと寄宿舎に入っていたから、いつも親に心配かけたらあかん思っていろんなことを我慢してきてん。うちが貧しいの知っとるさかい欲しい物も何ひとつねだらんかったわ。アボジとオモニが必死に働いてるの見てるし、それでもウリハッキョ行かせてくれてるから、それでええ思ってん。でもな、初めてわがまま言わせて…。アボジ、ミョンジャは高校に行きたい。高校でバレーがしたいねん…」ここまで言うとミョンジャは感情を抑えきれず肩を揺らしてすすり泣いた。