1本の樹にもー新米教師奮闘記⑦

(田舎の学生って真面目だと聞いたけど…都会とは別世界のようだ)帰宅する学生たちの姿を窓越しに見ながらヒョングはつくづく思う。

この学校の生徒たちはビジュアルに無頓着である。校則を平気で破ってボンタン、ヨウランにこだわる都会の学校とは違って学生服は上下既製品で全く手を加えない。男子の髪型は五分刈りで、ほぼ全員が学校で先生に刈ってもらう。通学組のほとんどは自転車通学で、女子はジャージにヘルメットといういで立ちで通学する。もちろんパーマや髪を染める子もいなければ化粧をする女子は皆無である。これはもう感心に値する。

授業に対する姿勢が真摯なのは言うまでもない。特に中3の学力が高く、毎年2学期末に行う統一試験では何年も連続1位を獲得する“名門校”なのである。学生時代、お世辞にも真面目だとはいえなかったヒョングは、授業を受ける子供たちの真剣な眼差しにしばしば圧倒され、必死にメモる姿にちょっと気遅れしてしまう。

そんなヒョングを見かねてか教務主任が「ヒョング先生、先生なんやから学生に気を使うことはないんやで。先生が思っとるよりずっと子供なんやから自信持ちや」と励ましてくれた。

この何気ない励ましが効いたのか、ヒョングは肩から力が抜け気持ちにも少し余裕ができた。(よ〜し、今日はギャグでもかましてやるか)

ヒョングは授業の合間にとっておきのオヤジギャグを放った。「コンニャクはいつ食べるか知ってるか?」「?」キョトンとしてこちらを見る学生たち。「こんにゃ食う」「…」反応なし。教室に重たい空気が流れる。(しまった〜💦やっちまった…)

だが、ヒョングはめげない。授業で使った鳥の写真を学生に渡す時も「ほら!はよ、とり!」と言いながら渡すと、受け取った学生が私の顔をジーっと見つめた。(これは行けた!)と思った瞬間、その子の視線が私を避けて机に落ちたのをヒョングは見逃さなかった。「…」シ〜〜ン… またもや玉砕!

その時、授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。肩を落としながら教室を出るヒョングの背後から生徒たちの笑い声が聞こえてきた。「こんにゃ食う!やって〜❤️」「ハハハハ」「早よ、トリ!」「ギャハハハ…」「ガマンするのつらかったわ〜」「あの先生、おもろいなぁ…」

(ヨッシャ~)わざと聞こえないふりをして何ごともなかったように教員室へ向かいながら、ヒョングは小さくガッツポーズを決めた。

1 COMMENT

くさったみかんより

何か青春に戻った気持ちで読んでます。ガンバ👍

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