はとオッパの病院に通いだして数週間経ったある日。まだ私と一緒に通院していた時のこと。
父:なんだか今日は腕が痛くてうまく持ち上がらないな。明日、はとに診てもらおう。
過剰すぎるほど健康には自信を持つ父が自分の身体を労っている。
病院へ着くなり、父がはとオッパに話す。
父:先生、なんだか今日は腕が痛くて
私:先生?
いきなりはとオッパを「先生」と呼び出した。驚く私に向かって父が言った。
父:当たり前だろ。俺の主治医なんだから。
父は役になりきっている。かなりの演技派らしい。
父の施術が終わり、次は私の番。待っている間も父は矢継ぎ早に質問する。
父:先生、先週に比べて俺の身体はどうなんですか。
父:だいたいいつも 2 時間くらい散歩するんだけれど、長すぎますか。
父:日常生活で何か気を付けたほうがいいことはありますか。
重症者かよ。めちゃくちゃ聞くじゃん! 最初に私が誘った時には「健康だからいい」と一蹴したくせに。そもそも、家族絡みの仲なのに、いきなり「先生」と呼び出したのがかなりおかしい。私は吹き出しそうなのを必死にこらえる。
はとオッパは私の思いとは裏腹に、「主治医」としてしっかり父にアドバイスをする。
はとオッパ:アボジは首に負担がかかるから上を見上げるような仕草をしない方がいいです。なんでも目線の高さを保つように意識してください。
主治医からアドバイスをもらえた父は、嬉しそうに翌週の予約をとって帰った。
数日後。母が頭を悩ませている。
私:どうしたの?
母:アッパが、自分の部屋に新しいテレビ台を買うって言いだして聞かないのよ。なんでも今のじゃ位置が高すぎて、見上げないとテレビが見れないからだめだとかなんとか、、、
どうしよう。心当たりがありすぎる。見上げる仕草を止められたアドバイスのせいだ。確かに目線の高さをを保てってゆってたな。はとオッパめ。。。
母は思いつくとすぐに行動するたちなので、翌日には新しいテレビ台が届いた。自分の通院のアシと父の健康を手に入れるのと引き換えに、結構な面倒と出費を招いてしまった。しかもその代償は、この先まだまだ計り知れない。ちなみに2か月以上過ぎた今でも新しいテレビ台は段ボールに入ったまま玄関に放置されている。