【思い出】男の自慢はカタさにあり？

最近の民放では、素人が棒読みする健康食品系のCMがやたら流れている。 特にBSで流れるCMは、地上波よりもワンランク上である。

「 いや～ぁ、 これで男の自信がまた蘇ってきました」と、したり顔の親父が登場。「 カタイままですよ。 途中で萎えることもなくなりました」と、その効果を報告し、あげくには「女房も喜びますよ」と恥ずかしげもなくその反響まで語るありさまだ。

そんなことが男の自信なのかよ…。 俺は何度も同じCMを見せられ、少し虚しい気持ちにもなったけど、そういえば俺もかつて、カタイことで調子に乗った時代があったことを思い出した。

それはまだ、俺が小学校の低学年だった頃の話だ。学校の前に小さな公園があって、下校時には必ず立ち寄った。俺の目的は公園ではなく、その隅にある公衆便所の裏側だった。 そこには泥ダンゴに徹したジメジメした土があったからだ。

何よりもその上に混じった小さなキラキラ光る金属片のようなものが目当てだ。 公園のとなりには鉄骨の加工場があり、その鉄粉だと思われるが、これが俺の作る最強の泥ダンゴの材料であった。

泥ダンゴは何層にも土を塗り重ねることで、強度が増していくのだ。 その都度、家に持ち帰っては乾燥させるんだが、直射日光の下では、ひび割れすることもあるので、じっくり時間をかけるのが小学生の職人技だ。

その努力は後日、友達たちが集まって行われる泥ダンゴ試合のためだ。泥ダンゴ試合は、床に置かれた泥ダンゴをめがけ、上から別の泥ダンゴを落とすという至極簡単なもの。要するに割れた方が負けなのだ。

「お前、ズルして中に鉄入れてるだろう」と疑いを持つ者もいたが、俺は決して金属片のことは明かさなかった。

ある日 同じ組の女子がどこで知ったかこんなことを言ってきた。
「ね、〇〇トンムってすごくカタいんだってね！ねぇ、今度触らせてよ！」

もちろんそれば泥ダンゴのことだと分かったが、なんだかとても嬉しかった。 BSのくだらないCMで言う通り、男の自信とは、それで大喜びしている相手がいないと甦りはしないのだ。

「 本当に効くのかな？ その薬…」 ドラマよりもそっちの方が急に気になりだした。 
あなたは、まだカタくなりますか？