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1本の樹にもー新米教師奮闘記㉖

教員室で資料をあさっていたヒョングは1行の文章に視線を止めた。“子供たちはわれらの希望”「これだ!」ヒョングは思わず声を上げた。ヒョングは教育会会長の言葉を思い出した。

「箕島のダルスンさんは行商で稼いで貯めた30万円を全額寄付してくれた。市内のカンさんは建築機材を持ち込んで徹夜で工事を受け持ってくれた…そう言う話が沢山あるんや、ええか? 同胞たちがなぜそんなに頑張ったか分かるか?すべて子供たちのためや。ボロ学校やったら日本人にバカにされるやんか。誰だって自分の子に肩身の狭い思いさせたくないやろ? それに雨漏りする部屋でどうやって勉強するん?雨が降ったら本やノートが濡れてしまうんやで。子供たちにはしっかり勉強させてやりたいやろ? 不自由なく勉強できる学校を建ててあげたい…。そやから今の校舎をみんなで一生懸命建てたんや。ソンセンニム、あの校舎にはな、和歌山同胞の夢と希望が詰まっとるんやで」

ヒョングは教員室の中をぐるりと見渡した。柱ひとつ、窓ガラス1枚にも同胞たちの熱い思いが染み込んでいるいるのだ。(形にこだわらないで、同胞の気持ちを愛情をそのまま描けばいいんだ)ヒョングは筆を一気に走らせた。