【書籍】地震と虐殺 1923-2024

「朝鮮人が暴動を起こした、井戸に毒を投げ込んだ……」。関東大震災の発生直後、各地で飛び交ったデマによって多くの朝鮮人が命を奪われた。非常時に一気に噴き上がる差別と偏見。東京で、神奈川で、千葉で、埼玉で、悲惨な事件はいかなるメカニズムで起きたか。虐殺の「埋もれた歴史」は誰によってどのように掘り起こされてきたか。

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この本は、長年にわたって差別やヘイトクライムを追ってきた著者が、加害の歴史に目を背け、なかったことにしようという行政の姿勢や世の中の風潮に対し、徹底した取材と調査を積み重ね、渾身の怒りと憤りを込めて書き下ろした大著だ。

「地震の大揺れは一つのきっかけにすぎず、殺意を発動させたのは、まさに差別と偏見なのだ。だからこそ、日本社会は関東大震災における虐殺を教訓としなければならない」と100年前に起きた惨事と、現在の危うい社会状況は今も続いていると著者は訴えている。

著者は、各地の虐殺の現場を訪ね歩き、そこで何が起きたのかを現在の風景に重ねながら描き出している。現場は東京はもとより、千葉、埼玉、神奈川、群馬、新潟、福島そして韓国まで及び、地元の人への丁寧な聞き取りを試みている。

また、関東大震災の前年に、水力発電の工事で集められた朝鮮人が、タコ部屋労働を強いられ、逃げた者たちが多数虐殺された新潟の事件などは、意図的に朝鮮人を狙っていたと著者は訴えている。

「増悪と差別は無自覚なまま連鎖する。」これは過去の話ではないのだ。著者の問いかけは重くのしかかってくるが、そうした人たちがそのバトンを誰かに託し、次の世代に繋いでいくことの重要性をこの本は訴えている。