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【投稿】マダン劇「ウトロ」東京公演の話

たしか18時の回。20代前半くらいの女の人が、マダンで演じる役者の方を見ず、下を向いて泣いているのを見た。肩が揺れていて、私は役者たちと彼女を交互に見た。

5分ほどそうしたのだけれど、彼女は顔を上げず、うつむいてずっと泣いている。途中、彼女の隣で見ていた友人が彼女の様子に気付き、一瞬うろたえて、彼女の背中をさすった。

それでも彼女は泣き止まず、友人は彼女の右手を左手で握り、彼女の膝の上にその手を置いて、マダンを見続けた。

ちょうどそれは、少年ヨンチャンとそのオモニ(母親)がダンスを学ぶ夢のために、ウトロに居るハラボジ(祖父)とハルモニ(祖母)に会いに行く場面。

韓国籍に変えなければアメリカに行けない。オモニは懇願する。おでこを畳につけて叫ぶ。
「一生のお願いです!」

ハルモニはブチギレる。やかんに入ったマッコルリを持ってきて、立ったままで土下座をしているオモニを見下ろし、やかんの注ぎ口からマッコルリを飲み干す。

数人の観客が吹く音が聞こえる。
私は(ああ、在日コリアンやな。そんな知り合いを見たことがあるはず。)とニヤリと笑う。

でも、問題の彼女は泣いている。

空のやかんを畳に投げつけハルモニは叫ぶ。
「お前は!南北分断を認めるのか!!」
「戦争という手段を使って、一部の人間が幸せになろうとするその考えを、認めるのか!」

彼女がどんな人生を歩んできたのか知るよしも無い。憤るハルモニの叫びに、何かを思い出したのか、何かを考えたのか。

奥の部屋から出てきたハラボジの話が続いても彼女は下を向いていた。私も彼女の泣いてる理由をあれこれ考えてしまって、もう少しで落涙するところだった。

後日、一緒に来たと思われた知り合いに聞いてみたけど、彼女たちは知り合いでは無かった。 

その後の場面で、確か青年ヨンチャンが
「ちょっと大きくなり過ぎたかな」の台詞で彼女はやっと笑った。

どれほどほっとしたのかわからない。心の中で、彼女の人生を心から応援した。そんな思い出話。

写真はその場面。(数年前の公演より)

※記事は金民樹さんのfacebookから

1 COMMENT

感想文でも書いてもらえば良いですね🖊

役者みょうりに尽きる話ですね👀
本人の人生とかぶっちゃったのかな?何かしら心に刺さったんでしょうか?
ただ単に足の裏に刺さった棘が痛くて、必死に抜こうとして痛くて泣いていた~なんてことではないよね~💦
是非本人にインタビューして欲しかったね😊 しかし、みょうりに尽きる!

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