マー坊の祖父は元地域の民団団長という大物であるが、マー坊をとてもかわいがってくれ彼の前では優しいハラボジに過ぎなかった。マー坊がハラボジになついていたのっは言うまでもない。マー坊は独り暮らしの祖父の家に行くのが好きだった。
ひとりで家を訪ねてはハラボジの話し相手をしたり、部屋の掃除や買い物をしておこづかいをもらって帰ってくる。最初はおこづかいが目的だと思っていたが、それは違っていた。マー坊は老人を気遣う優しい子なのである。マー坊は確かに老人に優しい。お年寄りが大好きなのだ。
小学生の頃から彼は自発的に老人ホームの慰問を企画したりしていた。先生の引率もなしにクラスメイトと阿波踊りを練習し老人ホームで披露する。そのプロデューサーがマー坊なのだ。施設側とどうやってやり取りしたのかは知らないが、そのすべてをマー坊はやってのけた。
慰問当日、老人たちを前にマー坊がスピーチをして子供たちの阿波踊りが披露されると、ホームにいるご老人たちがみんな笑顔になった。この時ばかりは息子が誇らしく思えた。
だが、その喜びは帰路ですっかり消えてしまう。子供たちはお腹がすいている。子供だらけの集団に大人が1人… 結局、付き添い兼マネージャー兼運転手の私が彼らのスポンサーになるしかなかった。