【投稿】イヤな臭い

人間には本能的にイヤな臭いというものがある。これは生命維持のために、人体に害を及ぼす可能性のある臭いを危険と見なすための人間の能力だという。特に台所周辺での嫌な臭いというものは、まずは物が焦げる臭い、食べ物の腐った臭い、カビの臭いなどが挙げられる。

近頃は、野菜の腐る臭いに関して神経質になった。野菜の入ったダンボールが並んでいる勝手口に、コバエの一匹でも飛んでいようものなら、クンクンと犬ばりに鼻を利かせ、怪しい段ボールを嗅ぎ分ける。一つでも傷みが始まっていたら周りの野菜に傷みが広がるので、発見したらすぐに取り除く。

腐った野菜の中でも特に臭いの強烈なのが、玉ねぎと長ネギだという。鼻を突くような不快な臭いがするが、プロパンガスなどはわざとこの玉ねぎの腐ったような臭いの化合物を着臭剤として付加していると聞いたことがある。

なので台所で玉ねぎの腐った匂いがしたら、まずガスの漏れを確認し、それから玉ねぎと長ネギをクンクンする。この順序が正解だ。

でも人間とはおかしなもので、嫌いな匂いもあれば好きな匂いもある。若き頃の話だが、好きな後輩ととあるラウンジで一杯飲むことになった。その時に出されたチーズの盛り合わせの中に青カビチーズがあり、お酒を飲みながらその子が言うのだった。「私、この臭くさいの大好き！」

 うれしそうにゴルゴンゾーラを肴にお酒を飲む女の子に私は心の中で叫んだ。
「俺はこの臭くさいのが大嫌いだ…」と。