どれくらい頭を預けていたのだろう…
一時の興奮から徐々に冷めて冷静さを取り戻したス◯。Sスの暖かい胸は心地よかったが、いつまでもそのままでいる訳にも行かず、顔をあげようとしたが、泣いて腫れ上がった顔をあげるにはちょっと恥ずかしかった。
一方のSス、とっさにス◯の頭を抱きしめたのはいいが、どうしたらいいのか分からなかった。(ヤバイ、心臓の音が聞こえるんじゃないか?)Sスの鼓動は高鳴っていた。
しばらくして、落ち着きを取り戻したス◯の肩をゆっくりとを起こして、Sスは顔を覗き込んだ。「大丈夫?落ち着いた?」と優しく聞くとス◯ははにかみながら頷いた。
「ゴメンね、取り乱しちゃって…Sスの顔見たら急に涙が出ちゃった。なぜか解らないけど…」とSスの瞳をジッと見ながら言った。
その視線が眩しくSスは焦った。
「な、なんで俺の顔見て泣くんだよ。心臓止まるかと思ったよ。」と早口で答えるとス◯は笑いながら「心臓の音がすごかったよ ?」と微笑みながら言った。(私の為に胸が高鳴ったんだ…)何とも言えぬ嬉しさが込み上げた。
「バ、バカな事言うなよ…し、心臓の音が聞こえる訳ないだろ?」と必死で否定するSスを見て、普段は冷静なSスが慌てる姿が可笑しくて声をあげて笑った。
その姿を見てSスは安心した。大きく息を吸い込んで、心を落ち着けて「そんなに笑う事ないだろ?…もう落ち着いた?」と安堵の言葉をかけた後、気になっていた話をはじめた。
「でも、やっぱりおかしいなと思ったんだ。」「何が?」「いや、修学旅行がさ。毎年秋に行くのに今年は6月だったろう?」「うん…それが何か?」「うん、それと今日の発表と関係あるんじゃないかな?」「どう言う事?」「つまりさ、修学旅行を秋にすると学生服でまた荒れるだろ?だから学校としては夏服の時に行きたい訳よ。だけど、9月は全体大会がある。となると、もう開襟シャツの時期は6月しかないからね。」
「それで早まったんだ…」
「大人の事情って事かな?でも芸術クラブが犠牲になるのとは別問題だよな。芸術クラブが可哀想だよ…でもさ、理不尽さは感じるけど決まった以上は頑張らないとな。」
「うん…ありがとう。」ス◯は素直に頷いた。
その時だった。
「あれれれ?仲良いね〜、君たちどこの学校?」とバカにした様な話し方で大声で話しかけて来る一団がいた。「お〜、サンペンじゃん、朝高、渋いね〜」「ん〜?こっちはチョゴリか?女の朝高生〜ハハハ」
ス◯の顔が一瞬で凍りついた。
「こ、国◯舘…?」
学生服にボタンは無く、黒いジャバラが目に付いた。Sスは「何だお前ら!」と叫びス◯と一団の間に立ちはだかった。
そして우리말で「ス◯!今、電車が入って来たから、すぐ電車に乗るんだぞ!俺の心配はするな!大丈夫だから。」と話した。
「あ〜ん、何をくっちゃべってんだ?コラ!」と大声をあげてジャバラが近づいて来た。
電車のドアが開いた。
乗降客でごった返す。
スタートのベルが鳴る。
ジリリリリ…
「ス◯!今だ、早く!」とス◯の腕を掴んで電車に乗せた。そして扉の前に立ち「オイ!シカンボウ!やるならやってやるぞ、コラ!」と扉の前で両手を広げながら啖呵を切った。
(早く閉まれ、早く、早く…)Sスの頭にはス◯を無事に帰す事しかなかった。そして(5人か…ちょっとヤバイかな?)と他人事の様に思った。
ス◯は「Sス、乗って乗って!早く乗って!」と叫ぶがSスは乗って来ない。
プシュー!
電車のドアが閉まった。
「Sスー!」
悲痛なス◯の叫び声が車内に響いた。
ス◯は次の目白駅で降りて反対ホームの上野方面の電車に飛び乗った。
普段は何とも思わない乗り馴れた駅間が今日に限って遅く感じる。(早く着いて、早く、早く…)
ス◯は池袋駅に着いた電車から、飛び降りる様にして反対側のホームに走る。
(Sス、Sス、どうか無事でいて!)
ホームには人だかりが出来ていた。
その中心にSスが顔から血を流して倒れている。誰が呼んだのか遠くでサイレンの音が聞こえる。
ス◯は泣きながら走り寄るとSスを抱き上げて「Sス!しっかり!大丈夫?Sス!Sス!」と必死に声をかけた。救急隊員が担架を担いで走って来る。
…
あ~あ やられちゃったね💦
でも、一応朝高らしくて、カッコイイ~👀
ホームでイチャイチャしてたから、油断してたんだね~💦
それで?それで?