3年12班の愉快な面々　15

事件から3日後にSスが戻ってきた。「Sスー！」「もう大丈夫なの？」「後遺症とか残ってない？」それまでのどんよりとした雰囲気を吹き飛ばし教室は久し振りに明るくなった。

「迷惑かけてすみませんでした。」と、まだ顔に青タンが残るSスは挨拶をした。そして席に座る時、チラッとス◯を見てニコッと笑った。ス◯は涙を溜めながら「ありがとう」と呟いた。

Gチも安堵の表情を浮かべた。何より無事にこの教室に戻って来てくれた事がありがたかったし嬉しかった。でもＧチは彼なりのスジを通そうとしていた。…

一週間が過ぎた。教室にはいつもの落ち着きが戻って来た。しかし、Gチの中では怒りが渦巻いていた。それは今日学校に届いた警察からの連絡であった。「犯人は捕まえられなかった」…

Gチは憤る気持ちを抑えながらどうするか考えていた。すでに殴った相手を探し始めていた。（あいつらだけは絶対許さねぇ…）Ｇチは拳を握りしめた。

そこに3階からCホ、M鉄、ホGが上がって来てGチの周りに集まった。「おいGチ、犯人がわかりそうだ。」とホGが話した。「Sスをやった奴はおそらく川口の奴等だと思う。」と Cホが言った。

「何で判るんだ？」とM鉄が聞いた。「後輩が朝、川口の駅で士館坊見かけたけど2人は鼻に絆創膏してたらしい。そいつが言うにはいつも5人連れでいる奴等らで、朝高をやったとか言いふらしているらしい」

因みに、Cホは埼玉出身、M鉄は多摩1出身、ホGは第1出身の各々腕っ節が強いGチの友達だった。「そいつらに違いないな。見つけたら絶対許さねぇぞ！」中でもM鉄はSスと小学からの友達で話を聞いていきり立っていた。

「まぁ落ち着け！むやみに動いても意味がない。」とホGがたしなめる。「でもとりあえずそいつらから当たるしかないだろう？Gチ」「そうだな、動くか…」と立ち上がろうとした時、金先生が入って来た。

「何だ？血相変えてどこに行くんだ？」
「…」

無言で答えないGチ達を前に先生は言った。「わかってる…友達として、男として、朝高生として、心の深い所にある一番大切なものを守りに行くんだろ？」

一同顔を上げて先生の顔を見た。「これだけは言っておく…怪我はするな！」
その言葉を残して先生は出て行った。
先生の気持ちがありがたかった。
「行くぞ！」一同立ち上がった。

話の行方を見ていたHソン始めクラスの男達が声をかけた。「俺達も行くよ！」一同は顔を見合わせてニコリと笑って言った。「ありがとう、皆の気持ちだけ貰っておくよ」

何か言おうとしたHソンだったがホGがたしなめた。
「今回はちょっとヤバくなりそうだ。また、相手は5人だろ？大人数で行ったらあいつらと同じ卑怯者になっちまう。だから今回は俺達に任せてくれ、な？」と言ってHソンの肩をポンと叩いた。

「どこから行く？」と血気盛んなM鉄が言った。「先ずは池袋駅で待ってみようか？」とGチが言うと「そうだな」と皆で池袋駅に行って事件のあった時間まで連絡通路付近で待っていた。事件から一週間経ったとは言え同じ場所にノコノコ出て来る奴などいないとは思うが、手掛かりはここと川口駅だけなので仕方なく待ってみた。

電車がホームに入って来た。「やっぱり来ないな〜今日は諦めて明日、川口駅に行ってみよう」と、一同が諦めて帰ろうとした時ホGが「あっ！いた」と叫んだ。赤羽線を利用するとばかり思って、連絡通路を見張っていた彼等の裏をかいて、奴等は池袋駅で降りずに田端経由で川口駅に帰ろうとしていた。

奴等も警戒してるのだった。

電車の扉が開いた。ごった返す乗客に紛れて、静かにGチ等は乗り込んだ。奴等の話し声が聞こえて来る。

「やっぱり池袋で下りないで正解だろ？あいつ等は絶対赤羽線で見張ってるって」リーダーっぽい男が得意げに話してる。「ははは、あいつ等チョンだからな…バレねぇよ」「こないだの奴も1対5で勝てる訳ないのに逃げもしないんだからな。バカだよな。ははは」

「でもお前はそいつにパンチ喰らってたな。ダセェな。」「まさか反撃して来るとは思わなかったから…油断したんだよ。」「バ〜カ、今度はそんな言い訳聞かねぇからな。」「俺とお前の同時攻撃が効いたな。背後から後頭部に回し蹴り！倒れた時、頭思い切り踏んでやったらうめき声あげやがったから結構効いたんだな。ははは」

「そのあと、腹に目一杯ケリ入れたらもんどりうってやがったな、ククク…手応えはあったぞ！」「それにしても警察が学校に来た時はびっくりしたな。あいつ入院したらしいけどな」「警察はうちのOBが多いだろ？上手くもみ消してくれるそうだから心配すんな」「それなら後2〜3発殴ればよかったな、ククク…」「ま、朝鮮人が死のうが生きようが関係ねぇよ。ははは」5人は笑いながら話していた。

Gチを始め4人は静かにそいつ等に近づいて行った。

さぁ、朝高生の反撃が始まるのか！
続き…ます。