9月に咲く花のように

3年12班の愉快な面々 31

十条銀座入口の「風月堂」の3階は人影がなかった。ここなら落ち着いた話も出来そうだ。「それで … 何だ? 相談って?」とGチが切り出した。暫く考えてたSスが口を開いた。

「誰に相談したら良いのか 分からなくて… Hソンはちょっと違う感じがするし…」といつものSスらしくなく煮え切らない。「だから何だよ。恋の相談?」と冗談で言った。Sスは「うん」と頷いた。Gチは飲んでたコーヒーを吹き出しそうになった。「え、本当に?誰?もしかして…ス◯?」Sスは小さく頷いた。

「でもお前… 大学受験で大変なんだろ? そんな事言ってて 受験は大丈夫なのか?」「だ、だから…気持ちをはっきりしたいんだ。どうしたらいい?…告白した方が … いいかな?」「ちょ、ちょっと待て。落ち着けよ」と興奮気味に言いよるSスを落ち着かせる。

「ス◯か〜。あいつあれだけ可愛いから ライバル多いぞ」と笑った。 「いつからだ? あの時からか?」とシカンボウとの一件を思い出しながら聞いた。「うん…あの時がキッカケかな?」とSスは答えた。「病院で必死に手を握って力付けてくれて…何となくあの時から意識する様になったんだよ。勉強してても落ち着かないし…最初は何でか解らなかったんだけど、ある日ス◯の顔を見たら…それで、恥ずかしいけどGチに相談したんだよ」と苦しい胸の内を打ち明けた。

「やはり打ち明けた方がいいかな?」と重ねて聞いた。Gチは暫く考えて「今ス◯は大事な公演を控えてる時だから、あまりそういう問題は 言わない方がいいな。公演が終わって落ち着いて話した方がいいと思うよ。でも…」また暫く考えて「俺が感じる事だけど、ス◯もお前が嫌いじゃないと思うけど…ま、これは俺の感覚だけどな」と言った。「そうかな〜?だと良いんだけど…」とSスは言った。

舞台では舞踊部の演目が始まっていた。ところが、ス◯の動きが悪い。「ス◯ー!何してるの!ほらそこで!」と指導教員から檄が飛ぶ。挙げ句の果てに「ダメ!もう一回!」とダメ出しまで出た。2階で観てたMリは「何かス◯、いつもと違うわね、動きが悪い感じがするわ。どこか悪いのかしら?」と心配する。12班のみんなも同じ様に感じていた。

舞台では音楽が高鳴り、クライマックスを迎える。次第にス◯の動きも激しくなる。動きが頂点に達してス◯は舞台に倒れ込む。本来ならゆっくり起き上がり最後のシーンに向かうのだが…起き上がらない。異変を感じた他の舞踊手達が「ス◯ー!」と叫んで駆け寄る。出演者達はざわつく。12班のみんなも立ち上がって不安気に舞台を見る。GチがSスを見た時、すでにSスはそこにいなかった。Sスは急いで階段を駆け下りて舞台の袖に向かって走っていた。Gチは微笑んでその姿を見ていた。

ス◯は舞台袖のソファに横になっていた。意識を取り戻したス◯を見て安心した部員達は、一人を残して練習に戻って行った。先生が「馬鹿ね。調子が良くないのなら言えば良いのに…」と言うとス◯は「すみません。皆に迷惑かけちゃって…」と涙ぐんだ。先生は「馬鹿ね…ムリさせたのに気づかないなんて…ゴメンなさいね。ちょっと横になって休んでなさい。」と言って残ってる部員にも「休憩の邪魔になるからあなたも練習に戻りなさい。それじゃね」とひとこと言って席を離れた。

遠目で心配そうに見ていたSスは、ス◯が一人になるのを確認して静かにス◯に近付いた。目をつむっていたス◯が何気なく目を開けた。すると横に思いがけずSスがいる。

「あ、Sス。どうしたの?」「あ、き、気がついた?いや、2階で見てたんだけど、倒れたのを見てちょっと心配になって見に来たんだ。大丈夫なの?」と心配そうに顔を覗き込んだ。

ス◯は嬉しかった。(心配して2階からここまで来てくれたんだ。)ス◯の顔に笑顔が戻った。「ありがとう、ちょっと疲れてただけ。もう大丈夫だから」と言って起き上がろうとした。「だ、だめだよ!まだ無理したら!」と止めたが「座ってる方が楽なの」と言う声に黙って従った。「みんなが見てたのに恥ずかしいな…倒れちゃって…」とス◯が下を向いた。

「いや、カッコよかったし 綺麗だったよ。マジで!」と親指を立ててス◯の顔を見た。「本当?ありがとう」と言ってジッとSスの顔を見た。びっくりして目線を逸らしたSスは「大丈夫そうだから戻るね。無理しちゃダメだよ。」と言って小指を出した。ス◯はプッと吹き出したが、小指を出してげんまんをした。遠くで声がした。舞踊部の部員が戻って来そうだ。慌てて小指を離した二人は微笑んだ。Sスは急いでその場を離れた。

席に戻ったSスを見てGチは意味深な笑顔で「ス◯は大丈夫だったか?」と聞いて来た。その時、音楽が鳴り舞踊が始まった。中央にス◯の姿が。「あ、ス◯!大丈夫だったんだ。よかった。」とMリが声を上げた。

Sスは「うん、約束したから…」と言って、舞台の上のス◯をまぶしそうに見つめた。

1 COMMENT

高3に戻りたい💦

良いね~恋バナ👀 卒業間際は、みんなソワソワするんだよね~😊
鈍感な自分は、進路のことで頭がいっぱいだったけど、後輩の女子から告られたもん~💓でも、すぐに終わっちゃったけどね💦
この二人は、うまくいって欲しいな~

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