Sスは受験に向けて忙しい日々を過ごしていた。彼の目標は、日本のW大の法学部に入学して弁護士になる事だ。在日同胞の権利を法律的な面からサポートして民族的権利を守りたいと思ったからだ。
彼をしてそう思い立たせたのは、ウリハッキョと日本学校との定期券の違いを知った時だった。ウリハッキョの学生には学割が適用されず、同じ学生なのに高い定期券を買わされている。「差別」と言う理不尽さを、まざまざと見せつけられたショックは大きかった。
それからと言うものSスは、大好きだったサッカー部も辞めて、W大の法学部に入学するため、わき目も触れず一心不乱に勉強に打ち込んできた。その過程で思春期の男子らしく、気になるス◯との事、その気持ちを持て余し、いっその事告白しようかと葛藤した日々…だが(自分の目標を達成した時に告白しよう)と心に誓って今まで以上に勉強に力を入れた。
今日もSスは予備校を終えて池袋駅で電車を待っていた。すると「Sス!」と呼ぶ声に振り向くとス◯が笑みを浮かべて立っていた。「どうしたの?もうソジョは引退したんじゃないの?」と言うと彼女は笑いながら「来年の初めに金剛山歌劇団入団の試験があるの。そのための練習」と言って目を輝かせた。
(顔が輝いてるな〜夢だもんな〜夢に向かっている姿はかっこいいな)と思い、やはり自分の思いは今は言うべきではないと思った。
Sスと別れたス◯はちょっと前までの事を思い出し微笑んでいた。電車の中でSスは将来の夢について熱く語った。必ず法学部に入って弁護士になる、そして同胞の権利獲得の為に頑張ると言う事…熱く語りすぎて駅を降り損ねたSスの顔がまた可笑しかった。
(自分の夢に邁進してる姿はカッコいいな。でも今、余計な事を言って気持ちを紛らわしたら勉強の邪魔になるし、受験結果を聞いて話してもいいかな?私も大切な試験もあるし…)とス◯は思った。
2学期も終業式を終え年の瀬も迫った大晦日に12班の男達は、M道の快気祝いと忘年会を込めて飲み会を行った。「カンパーイ!」並々と注いだグラスをグーッと飲み干し、12班の男達は爽やかな笑顔だ。
Hソン、Gチ、哲夫を始めとして男子が勢揃いだ。「やはりSスは来ないか…」「うん、卒業の飲み会には絶対参加するって言ってた。今は飲み会どころじゃ無いみたいだ」とY男が言った。「あいつの夢を叶える大切な時期だからな。みんなも進路は考えてるんだろ?」とHソンが振った。
朝銀、商工会、専門学校…色々な意見の中でGチは「俺は、朝大に行こうと思ってる」と言った。
「えっ?朝大?」と皆が驚いた。Hソンは「何学部を希望してるの?」と聞くと彼は「歴史地理学部」と言った。「卒業してどうするの?」と哲夫が聞くと「…선생님…」と小さい声で言った。
「え〜っ‼️」一同仰け反った。
「いや、良いと思うよ。だってこの一年Gチは頑張ったもん。みんなもそう思うだろ?」とHソンは皆の顔を見回した。皆が頷いた。
「確かにGチ変わったよな」「本当だ。去年とは全然違うよな」と褒める中「でも、学生のくせに忘年会で酒飲むようじゃソンセンニンにはなれないだろ?」とY男が茶化すと「それを言うな!」とGチが軽く肩を叩いた。笑い声が上がる。
テレビでは紅白歌合戦が盛り上がっている。紅組司会の佐原直美がハスキーボイスで曲の紹介をする。初出場の歌手が歌い出す…
♫上野発の夜行列車降りた時から♫
…誰かが口ずさむ。 白組から
♫京都にいるときゃ〜忍(しのぶ)と呼ばれたの〜♫
と聞きなれた歌が流れると口ずさむ人数が徐々に増えて酒の勢いもあって最後は合唱になった。
♫昔の名前で出ています〜♫
店を出た彼らは寒い中、飲み屋街をゆっくり歩く。
遠くで除夜の鐘が聞こえた。
「どうだ?今から初詣に行かないか?」Gチが言うと「行こう行こう」と歩き出した。「いよいよ卒業か…」Hソンがしみじみ呟いた。
沢山の思い出を刻んだ1977年も終わり希望に満ちた1978年を迎えた3年12班のメンバー…卒業まであと少し。
ラストスパートだ。
頑張れ!俺!…え?俺?(笑)
えええ〜?高3で居酒屋で飲酒🏮?
そりゃ〜ダメじゃん🙅♂️
って、俺も散々飲んでたけど〜🍺
いよいよクライマックスだね👀
最後は東天紅が登場するのかな?
高校生が普通に飲む時代。今は厳しくなってるからね🍺
それにしても、作者さん5班ですよね⁉️同窓会参加者いっぱいで良いね✌️