皆、固唾を飲んでボスを見た。「条件はただひとつです。これから先、金ハヌルさんには一切関わらない事。これだけです。もちろん『確約書』の様な物を書いてもらいますが…」ボスは淡々と言った。
みんな「えっ?」と言う顔でボスを見た。プサンホは怪訝な表情で聞いた。「ボスさん、示談金は?」ボスはフッと笑って「いりません。病院の入院費だけで結構です」皆呆気に取られた。
「な、何を言ってるの?ボス氏。示談金は当然貰える権利よ。」とハヌルは言った。「そうです。遠慮なく仰ってください」プサンホも続けて言った。「いえ、元々、示談金は貰うつもりはありませんでした。元はと言えば今回の事件は、私にも責任があります。なので…ただこれから先、金ハヌルさんには一切関わらない約束だけはしっかりお守り頂きたい。私にとってこの条件ほど大切な事はありません」とキッパリ言った。
ハヌルは驚いてボスの顔をマジマジと見た。そして言いようのない感情に包まれた。(ボス氏…自分の事より私の身の心配をしてくれている…なんて、なんて人なの?)ハヌルの心は震えた。サンホも同じだった。(示談金なら幾らでも要求出来るのに、一銭も要らない?ハヌルの身の安全が最も大切なのか?)
サンホは驚きを超えて感動に包まれた。サンホは裸一貫で事業を始め、一代で今の大グループを作り上げた。付き合った人間は皆、金の為なら何でもする様な輩ばかりだった。そんなサンホにとってボスの考えには驚きしかなかった。
…
「アッパ、ちょっとカッコつけすぎじゃない?示談金は要らないなんて…」と二人が出て行った扉を見ながらオギが笑った。「そうか?」と言いながらボスは笑った。「でも、アッパらしいわ」とオギも笑った。そして耳の近くに顔を近づけて「カッコよかったよ」と言って「じゃあ明日また来るね」と出て行った。ボスは手を振って見送った。
部屋を出たオギは玄関ロビーを抜けて表に出た。玄関前広場の大きないちょうの木を見た。ボスが病室から見てたあの木だ。見上げる先にボスの病室がある。(アッパ、やっぱりハヌルさんの事が気になってるのかな?ハヌルさん、とても素敵な人でオギも好きだけど…ちょっと複雑だなぁ)オギは一人家に向かって歩き出した。
ファーストクラスの椅子はまるでベッドのように柔らかく身体を包んでくれる。所用があるからとプサンホは日本に残り、空にはファーストクラスのチケットを用意してくれたのだ。帰りの飛行機の中でハヌルはボスの事を考えていた。
初対面の日、周りに当たり散らしていたハヌルに本気で注意をしてくれた事、東京見物の時、道を歩くにも危ないからと、いつも道路側を歩いてくれた事、ボスの家でこれ以上ハヌルが傷つくのが一番心配だと言ってくれた事、そして今日の事…(ボス氏…ありがとう。何より私の安全を考えてくれてる…)
ハヌルは胸が締め付けられる様な、切ない気持ちに包まれた。(いやだ、私…。ボス氏を本気で…)今まで漠然としていたボスに対する感情が『愛』に変わった瞬間だった…
飛行機の窓からソウルの街並みが浮かんで来た。
続く
かっこ良すぎるよ~ ボス👍
ついでに「店の内装代…💦」なんて言わないよね~😆
ハヌルも真剣に好き💖になっちゃうよね~ ど ち ま ちょ
「空にはファーストクラスの」って、ハヌルの日本名まで暴露されちゃうし~👀
んで? んで? そろそろ ハッピーエンド?😍