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バブル時代の不動産業⑦ 捨てカン

街中や住宅地の電柱に設置してある電柱広告とは違って紙の周辺をテープや針金で固定して留めたり、立て看板を公共物に立てかけてお客の目の高さ程度まで設置することは犯罪に当たる。このような看板広告を不動産屋では捨てカン(看板)と呼んだ。

捨てカンを設置するところを警察に見つかれば即現行犯で警察のご厄介になる。ほぼ1日中、警察官の取り調べ。その後、身元引受人同席の上、キツーイお叱りを受けることになる。過去には何人も現行犯でお世話になったけど、俺は一度も捕まらなかったぜ。

だって俺ら在日は捕まった時のデメリットたるや日本人よりきついじゃん。だから捨てカン設置の時は四方に目を配ってすばやく貼ることを基本としていた。だからかな「〇〇君は捨てカン貼るの早いよな」と噂にまでなったなあ。でも危なかったことが一度あった。

捨てカンは、ドライバー1人と捨てカン貼り1人の2人が基本。ある日、捨てカンを夢中に貼っていると、「〇〇ちゃん、パトカー!」と相棒が叫んだ。

俺は持っていた捨てカンを道路に捨てて営業車に飛び乗った。ドライバーはもと〇〇地区の暴走族出身で地元の地理に詳しかったのが幸いした。心臓バクバクだったけど地元しか知らない裏道や一方通行を駆使して逃亡。どうやらパトカーは俺たちを見失ったようだ。住宅地の駐車場でエンジンを切り、1時間ほどおとなしく待ってからやっと現場に戻ることができた。

だが、警察もバカではない。パトカーが売り出し現場の駐車場でうちらを待っていた。万事休すだったけど、現行犯ではないからお縄になることはなかった。「フー」 警察が帰ったあと、2人で安堵のため息をついた。前科1犯になるアブナイ1日だったぜ。

注: 軽犯罪法第一条第三十三項には「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし … 拘留又は科料に処する 」とあるから良い子はやってはいけないよ。