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【思い出】山小屋でのいやらしくて美しい瞬間

何年か前に私が登山にはまっていた頃、どうしても行きたい登山コースがあった。しかしそこは「秘境」と呼ばれるコースで、毎年のように死者がでる。また登山道が全線開通するまで、雪解けを待たなければならず、登山コースが開通するチャンスは10月の一ヶ月しかないのだ。

その場所は「黒部下ノ廊下」と呼ばれる秘境で、登山好きな人は一度は耳にしたことがあるだろう。長年このコースは行きたかったけれども、一人で行くには勇気がいるし、事故で滑落したら死体も上がってこないと言われている。そこで5つ上の先輩に声をかけて一緒に行くことにした。

「黒部下ノ廊下」と呼ばれる旧日電歩道は、道が平坦でも滑って転がったら下の谷まで一直線で絶対に止まらない場所だ。 初めは注意深く用心して歩くが、人間とは面白いもので、集中力が長続きしないのだ。集中力を切らさないためにお互い励ましあいながら、黙々と8時間を歩いた。

早朝の6時半から登山を始め、宿泊先の阿曽原あぞはら温泉小屋に着いたのは午後4時ぐらいだったと思う。この小屋はプレハブ小屋で、11月中旬になると解体し、大事なものはトンネルにしまい、鉄骨や柱材は外に丁寧に積み上げておくらしい。雪で埋まってしまうので、毎年そうしているのだ。

この場所は、吉村昭の「高熱隧道」の小説の舞台になった所で、当時のトンネルからはいまでも高熱の温泉が吹き出ている。その温泉水を引いた露天風呂がこの小屋にはある。そこは更衣室もトイレも何もなく、ただ湯船があるだけの簡素な作りだ。

昼間は一時間ずつ男女交代制で、入る時間が割り当てられているが、夜の八時からは男女混浴になる。「ご自由にどうぞ」というわけだ。

「無料の露天風呂」+「八時からは混浴」?!

夕食後、さっそく私と先輩はヘッドライトを装着し露天風呂へと進んだ。温泉小屋から出た途端、真っ暗で月明かりもない道に恐怖心を覚えるが、スケベ心が勝るのか、真っ暗な道を下って行くと真っ暗闇の中から露天風呂が現れた。

真っ暗な露天風呂には、私と先輩以外に、中年の男女が先に入っていた。「こんな真っ暗な湯船に入っている人がやっぱりいるんですね」とひそひそ声で先輩に言う。露天風呂は異様なほど暗くて、最初は男女の顔形がはっきりと見えなかった。それがしばらくすると目が慣れてきて、彼らの姿がぼんやりとだが見えて来た。

男の方は、お世辞にも整っているとは言い難い容姿だが、筋肉隆々なことはすぐにわかった。 女の方は胸あたりまで伸びた長い黒髪で、痩せていて美しく見えた。二人は静かに露天風呂の隅の方に座っている。

「ザザーッ」
音を立て、二人は露天風呂を先に上がっていく。私たちは思わず無言になり、チラチラと横目で彼らのことを確認してしまう。それからしばらくして私たちも風呂から上がり山小屋へと戻った。

山小屋に到着したら、先ほどの二人が濡れた長い髪を丁寧に拭いているところだった。 私はその光景から目が離せなくなった。 隣で見ていたその先輩も無言になっている。

男は黙々と女の濡れた髪をバスタオルで丁寧に拭いていた。女もそれが当たり前のように首を男の方に傾け、目を閉じている。

その光景は、私が知っているどんな過激な映像よりも、すごくいやらしくて美しい瞬間だったことは間違いない(笑)。

6 COMMENTS

この緑色は、なんて表現するの?エメラルド?

うぉぉ~ 怖すぎて、あそこが縮こまっちゃいそう~💦 私はムリかなぁ💦
でも、一人じゃなんだからって、誘う方が5つ上って言うのも解せないですね💦誘うなら下じゃない? その先輩も、その怪しい混浴風呂に誘惑されたのかなぁ?
最後の妖艶なシーンは、実は片方が長髪の同性愛カップルでした👀って落ちかな~と思った😂

エロチズム

う~ん。分かるような気がする。
エロさはそういう所にあるんだよね~。

高所恐怖症

怖そうな登山なのか、嬉しい混浴なのか、どっちにコメントしようか迷ってしまう〰️🤣

そんな命懸けの登山、絶対反対😰なんですかー、その崖は❗だいたい誰がスノコみたいな道を作ったんだろ、その人はちゃんと生きてるかな〰️😱

で、何がいやらしくて美しいのかさっぱり分かりませんが、多分いやらしいんだから恋人ですよね?普通のデートしてーー。

旨そうなおかず

秘境、露天風呂、裸の二人、混浴、山小屋、薄明り、濡れた髪…。
もう想像しただけで、ご飯大盛り3杯はいけそうだね(笑)

体力考えて行動しないと…

昨日もニュースでやってましたが、70代のご老人が黒部下ノ廊下で滑落し死亡したとのことでした。70歳にもなってこんな危ない山に行くのもどうかと思いますがね~。
ツアー客だったそうですが、老人が行く山ではありませんね。

滑落は死に直結

むかしから「黒部にけがなし」ということわざがある通り、事故が起きたらただで済まないと言われています。自分を過信したらいけないね。気を付けようっと。

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