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【スマホ小説】ボス 10

「あれはボスがこの店をオープンして5年が経った頃だったかな?次の年が「日韓ワールドカップ」開催で日韓の交流が活発になってた頃だった…」

ある週末の夜、客足も途絶え暇な時間にある一団が入店した。先頭に入って来た綺麗な女性が何か韓国語で捲し立てている。チラリと入口に目を向けたボスの手が止まった。
(ヒャン?)

リスの様な小さな顔に大きな瞳、高くはないが筋の通った鼻…しかしやはり違う。彼女が金ハヌルだった。韓国のスター歌手兼女優である。後ろに続くマネージャーらしき女性1人と責任者らしき男性が続く。ボスは「いらっしゃいませ」と言うと、乾き物を入れた小皿とコースターを人数分並べた。「ご注文は…?」と静かに声をかけた。

「도대체 사람을 어떻게 보고 그러냐고 !뭐 한국인이라고 우습게 보는거야 뭐야 !같은 한국인의 부탁이라고 들어줬더니 …개새끼들을 그냥 ¥@:&&¥@-…」

最後は早口過ぎて聞こえなかったが、何か腹に据えかねる事があったんだろう、文句は終わりそうにない。隣に座った女性が必死になだめてる。そこに同級生のホソンが入って来た。

ボスの近くに顔を近付けると「ボス、ゴメン。うちのイベントで無理を言って韓国から呼んだんだけど、不手際があって少々ご立腹なんだよ。ちょっと熱を冷ます為にジントニックでも出してあげて。そしてあの子の分はちょっと薄目に」と言うと片目をつむった。

スラッとした体格にスーツが良く似合う。細身の身体だが眉毛が濃く瞳に精気が宿る。ホソンは映画館と焼肉、パチンコ店など手広く経営している。金ハヌルが主演の新作映画を日本で上映するのに韓国から主演女優を呼んだのだった。ボスは「わかった」と言ってジンのボトルに手をかけた。

ジントニック(※)はロンググラスで飲む、爽やかで飲みやすいカクテルだ。ライムを一欠片入れる。

作っている最中もハヌルの怒りは収まらない。その時ボスの耳にこんな言葉が飛んで来た。「그리고 뭐야 …초라한 가게에다가 무뚝뚝한 주인、당신까지 날 우습게 봐?」とホソンを見て捲し立てた。今度はこの店に連れて来たホソンに喰ってかかるのであった。

普段なら聞き流すボスだったが、何故か一言口から出てしまった。やはり亡くなったソヒャンの面影がそうさせたのかも知れない。「초라한 가게여서 죄송합니다.」そう言いながらボスはジントニックを空の前に置いた。

瞬間、店の中に沈黙が流れ、捲し立ててたハヌルは驚いて口を押さえた。「아…아니…한국말을 아세요?」と空はボスに尋ねた。ボスはグラスを置きながら静かに微笑んだ。

「예 좀 압니다. 조선학교를 다녀서요」とハヌルの顔を見ながら言った。驚いたハヌルだったが、まだ怒りが収まらないみたいだ。

「아、아니 그래도 그렇지 오늘 그 시건방진자식들 …당신이 사장이야?」とホソンを睨んで捲し立てた。ホソンは慌てた。そして救いの目を隣の女性に向けた。マネージャーらしき女性が小声で話しかけたが、ホソンを睨む目には怒りが溢れている。ホソンは恐縮して下を向いてしまった。

見るに見かねてボスは口を開いた。「손님께서 많이 화가 나셨네요. 무슨 일이 있었는지는 모르겠지만 그래도 인생의 선배로서 무례를 각오하고 한마디 하겠습니다」と言って静かに話を続けた。

「이리도 아름다운 녀성이 그런 험한 말을 함부로 입에 담으시면 귀에 거슬리네요. 좀더 얌전하게 말씀하시지요 」驚いた表情でボスの顔を見たハヌルだったが一言「미안해요」と言って口をつぐんだ。

※ジントニック
ジン(注1)とトニックウォーター(注2)を1対3の割合でステアして作る。
(注1: 大麦、ライ麦、ジャガイモ等を原料とした蒸留酒。クセが少なくストレートやカクテルに多く使用される。
注2: 炭酸水に甘み、酸味、苦味を足した水)

          続く

            

1 COMMENT

ハーパーのソーダ割

驚き~ 二つ👀
一つは、ソヒャンは金ハヌルに似た美人さんだったんですね~😘
その二つは、ボスは「朝鮮学校」出身なのに、韓国語べらべらなんですね~👍
ついでに、三つ目~
ジントニックのレシピの注まで~😊 ありがたや~ ありがたや~💕
んで? んで? 小説はどうなるの? まさか、ハヌルとボスが~💕???
んな訳ないか~🤣

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