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介護のジカン―姑編⑭

姑にとって私は、ある時は使用人、ある時は娘、ある時は敵、ある時は故郷の先輩ねえさんである。今日の私は姑の“敵”のようだ。

姑と夫と3人でデイサービスの見学に来た。スリッパを履き冷たい廊下を抜けて中に入ると職員が出迎えてくれた。
職員:金さん、いらっしゃい。ご家族の方もどうぞ
3人で中に入る。広々とした空間に椅子に座ったご老人たちが体操をしていた。簡易ベッドもいくつかあるが寝ている人は誰もいない。ここは軽症者を対象にしたデイサービスである。

職員:あら、金さんの息子さん?いい男ね
姑:私のコレなのよ
そう言って姑は夫の腕を組んだ。姑の顔は口が裂けそうなぐらいの笑顔である。数十歳若ければ新婚さんに見えるかもね。

夫という言葉が出てこなくて“コレ”という言葉で表現したが、職員はプロである。ちゃんと伝わるのだ。
職員:まあ~、ステキなだんな様ね~
姑:(ニコニコ)そうなのよ~
職員:だんな様と腕組んで、金さんラブラブ~
姑:(ニコニコ)そうなのよ~
職員も慣れたものである。決して否定しないのだ。私も見習わなければいけないな。

案内されている間中、姑はずーっと夫と腕を組んで歩く。その光景がおかしくて私は小さく笑った。途中、夫が私に話しかける。すると姑が怖い顔で私をにらむ。今の姑は完全に“女”になっているのだ。ということは私は姑の恋敵?! まあ、どうでもいいけどね。でも、私と夫が話している時に私をつねるのだけはやめてほしい。本気でつねるからホントに痛いのよ。