介護のジカン―姑編㉒


認知症の人は徘徊して迷子になった時のために、名札を付けたり名前を首から下げたりしているが、姑はすぐに取ってしまうので、靴に名前とうちの電話番号を書いてある。そのおかげで、何度行方不明を防げたことだろう。しかし、最近は勝手に外出して頻繁に徘徊するので、靴も隠している。これで少し安心である。

特養への入居を明日に控えた夕方、私が夕食の準備をしていると隣のおばさんがやってきた。
隣のおばさん:コウさん、今、駅前で靴を履いてないご老人が警察と話してたけど、あれ、お義母さんじゃない?
私:靴を履いてない?…多分うちの姑です
次の瞬間、私は料理バサミを手に持ったまま、一目散に駅に向かっていた。さいわい駅までは歩いて5分の距離なので今なら間に合う!

駅前に到着すると、ちょうどパトカーが出発した。後部座席の真ん中にハンメが座っている!必死にパトカーを追った。
私:待ってくださーい! 待ってー!
周囲の人が何事かと振り返る。恥ずかしいなんて気にしていられない。パトカーの運転手さんがバックミラーを見てくれたのか、パトカーの速度が緩やかになる。そして停止。警察官が車から降りて私を待っている。

「あー、間に合った!」
パトカーに追いついた私は、警官にハサミを向けたまま事情を説明した。警官の視線は私の手にあるハサミに向けられている。刺されるとでも思っているのかな?

結局、事情を聞いた警察官がパトカーで自宅まで送ってくれて、その日はめでたし。めでたし。ハンメ、最後の晩までやってくれるじゃん。