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1本の樹にもー新米教師奮闘記⑭

夏休の最も重要な生活は部活の練習である。和歌山のメインはバレー部だが、夏休みの練習がその年の大会順位を左右すると言っても過言ではない。中でも合宿は生徒たちの技術と忍耐力を育む大事なイベントである。

寮生はもちろん通学生も含めたバレー部員が寄宿舎に泊まり、3泊4日の日程で近くの小学校の体育館を借りて練習に励む。先ずは中央大会出場を目指して。

全国朝鮮学校体育祝典の近畿地方枠は男子3校、女子4校である。男子は強豪東中(大阪)を筆頭に尼中(兵庫)、西播中(兵庫)の古豪、新興勢力の西成中(大阪)そして我が和歌山初中。

女子は東中、中中(大阪)、南中(大阪)、尼中、神戸中、京都中そして和歌山初中と男女共に実力校がひしめき合っている。合宿は予選を控えた最後の練習となる。

部活担当以外の教師も合宿の時は総出で後方支援に回る。女性教員は炊事担当。女子バレー部の補助指導を断ったヒョングも例外ではなくチョンファと共に食材の仕入れ担当にまわされた。

ヒョングは市場の買い出しには慣れていた。先日の夜会の時にも仕入れ担当だったヒョングは八百屋のオヤジを値切り倒して野菜を安く手に入れた経緯がある。

八百屋に行くと、オヤジがヒョングに近寄ってきた。「先生、どうせ今日も値切るんやろ? もうええわ。言い値で持ってけ」と最初から安く売ってくれた。「ソンセンニム、市場では顔ですね。もうすっかり和歌山人やね」

チョンファの関心とおちょくりの混ざった言葉を聞いてヒョングもまんざらでもなさそうだ。その後も店を何軒か周り食材を確保して学校に戻った。

教員室に戻ったヒョングはたばこに火を付けた。フーッと煙を吐きながらくゆる煙を眺めていると、なぜか無性にミョンスンに会いたくなった。

(夏休みに帰るって言っといたのに… 久し振りに会いたいな。元気でいるかな…)それまでもミョンスンの声が聞きたくて何度か電話をかけてみたが、いつも留守だった。

ミョンスンのことを考えると思わずニヤけてしまう。「何をニヤけてるんですか? また彼女のことでも思てんのちゃうん?」後から入って来たチョンファがヒョングをからかった。その声にヒョングは緩んだ口元に慌てて力を入れた。「別にニヤけてないって…」

合宿最終日。明日は近畿地方予選である。実戦を兼ねた男女対抗試合を行った。もちろん男子が圧勝、女子は悔しがっていた。特に担任のミョンジャは悔しくて涙を浮かべるほどだった。

程よい緊張感を保ちながら和歌山初中バレー部は近畿地方予選を迎える。

1 COMMENT

バレー部ガンバレ

ヒョング先生は値切りの達人にもうなったんですか😊
関西は値切りのやり取りが面白い所と聞いたけど。
口が上手いのか、人間味ですね。(*´・ω・`)b
バレー部、ガンバレー👊😆🎵

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