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1本の樹にもー新米教師奮闘記㉔

その晩、運動会関係者たち全員で打ち上げ会が催された。運動会の疲れからか無事に終えた安堵感からか、この日のビールは格別にうまい。ヒョングが教育会理事の父母たちと楽しく話しをしているところへグンサン先生がやってきた。彼はビールをグイッと飲み干し、その勢いのままヒョングに告げた。

「ヒョング先生、あんたは担任失格、俺は…寮長失格、そして、わしら2人とも教員失格や!」「…?」「あんたのクラスの寮生のニョモな、運動会の昼ごはんにパンを買うて寮の部屋で独りで食うてたらしいわ」

ヒョングは何も言い返せなかった。他の寄宿生も運動会には家族が集まる。しかし家庭が複雑なニョモの場合、親は運動会に参加しない。ヒョングはこのことを教務主任から事前に聞かされていたのである。(俺、何やってんだ。話は聞いてたのに… あいつ、どれだけ寂しかったろうか…)

ヒョングは運動場で学父母たちとご馳走を頬張っていた時に、ニョモは誰もいない部屋で独りでパンをかじっていたなんて… 浮かれていた自分が情けなかった。いや、生徒に目を向けず教師だと偉ぶっていた自分が恥ずかしかった。

暗い顔をしてうなだれているヒョングとチソン先生に教務主任が近寄ってきた。「済んでしもうたことはしゃあない。これを良い経験にして今後に生かせばええ。さ、飲め!」ヒョングはビールを一気に飲み干した。その後もやけになって飲んだが、それでも酔いは来なかった。

次の日、ヒョングはニョモを教員室に呼んで頭を下げた。「悪かった。ゴメン」ニョモは笑いながら「そんな、やめて下さいよ。そんなん気にしてへんし…」「いや、それは違う。担任のくせに気遣いが足りなかった。本当に悪かった」
本心だった。隣でチョンファがその光景をじっと見守っていた。