朝のホームルームで教室に入ったヒョングはクラス内に漂う微妙な空気を感じていた。(うん?なんだ、この空気は…)そう思いながらも、いつものように学生たちを見回すと、エミョンはヒョングをにらみミョンジャは相変わらずそっぽを向いていた。ヒョングはエミョンに(どうした?)とアイコンタクトを送ったが、エミョンはそれを無視してにらむばかり。何かあったに違いない。
休み時間にヒョングはエミョンを呼んだ。「何かあったのか?」「ソンセンニム、何のんきなこというてんの?」「ミョンジャが相談しようとしたのに、忙しいって追い返したんやろ?」「それは…」「ミョンジャ、がっかりしてましたよ」そう言ってエミョンは詳細を話し出した。
「この前の運動会の時、ミョンジャがアボジに、進学してバレーを続けたいと言うたらしいんです。でもアボジに“進学はあかん。高校など行かずに店の手伝いせぇ”と言われたらしいんです」「そうか… 分かった。ちょっと様子を見よう。心配かけてすまなかった」ヒョングの言葉を聞いてエミョンの顔がホッとした表情に変わった。
ヒョングはミョンジャの様子を見ようと、しばらくこの問題には触れないでいた。触れないというより、どう解決すればいいのか決めあぐねていたのだ。ミョンジャは日に日に暗くなっていった。授業にも身が入らず窓の外をボーッと眺めてばかりいる。
エミョンがいたたまれず「先生、何してんの? ミョンと話した方がええと思います」とヒョングに詰め寄った。「そうだな。分かった。ミョンジャを談話室に呼んできてくれ」とヒョングはエミョンに告げた。