ジンスの日常の仕事に特に変化はなかった。未登録の同じ番号から数回着信があったのを除いてだが。相手は留守録に何のメッセージも残さないから、ジンスは無視し続けていた。着信拒否機能を思い出して、その番号にブロックをかけようとした時、また電話がかかってきた。
ジンスは(誰だコイツは?!)と憤り電話にでた。
「여보세요. 조ジンス씨 맞습니까?」
ジンスは聞いたことの無い声だと思い、不機嫌をにじませた声でそうだと応じた。
「전 고정선이라 합니다. 연말에 도쿄역에서 당신 도움을 받았어요.」
ジンスはすぐには思い出せない。記憶をサーフィンして年末の東京駅を探ると、お金を貸した事に思い至った。先方は「어저께 다시 일본에 왔습니다. 꼭 만나서 돈을 갚고 싶은데…」と喋り続ける。ジンスは「대수로운 일도 아닌데」と応じた。相手は「아니요. 그때 일이 너무 고마워서요. 직접 만나서 인사드리는게 도리여서」と引き下がる様子はない。
ジンスは「그럼 그 돈을 慈善団体에 기부하세요. 바빠서 이만」と強制終了のように切ボタンを押した。忘れていた事にまた関わるのは面倒くさい。彼は番号を登録せずブロックをかけた。(年末に현주と再会した後、なんかいろんな事が起きるなぁ。ミミもそうだし、今の電話もそうだし、女性と賑やかになったような)とジンスは思う。そして彼は고정선の名を諳んじた…
ある日、ジンスのもとへ同業者から緊急の連絡がきた。ジンスが内装工事の請け負い契約をしたパチンコ店の情報だった。先方が、台関連の代理店業者に振り出した手形が不渡りになったとの噂が広まったらしい。
2回目の不渡りは即倒産になる。先方は弁護士を介在させ、計画倒産を模索してるとの事だ。契約はしたが工事日も先で、業者手配や資材の仕入れもこれからだったので、ジンス側は間一髪セーフとなった。実害を被らず、彼は(まだ재수가 あるね)と安堵のため息をついた。彼の仕事も相手があり、手形決済もままあるのでリスクはいつだってある。
その晩、大阪の태영から連絡が来た。「おう、ジンス、よう聞けや。今年の10月の前半頃にこっちで同窓会しよう思うけど、どや?」といきなり本題。周りが騒がしいから声がやたらデカい。ジンスは「半年以上先の話だろ。どやって、なにが?」と聞き返すと「大阪か京都でやろう思うてな。参加できそうか?」とまたクエスチョンだ。
「前向きに考えるよ、なんちゃって。絶対行くよ」と即答した。「今、関西のトンムらで集まって飲んでんねん。ワシが東京のメンバーと会うた話したら羨ましがってな。同窓会やろうとなった訳や」と태영の大声は続く。ガヤガヤした関西弁が何度も通話に割り込んでくるし、聞き取れないのでジンスは断りなしに電話をきった…
続く
新たなストーリーの予感が…
三角いや、四角関係になるのかな?
またまた楽しみですね…❤️