春のうららかさを感じよう

ジンスーMy love ⑱

日曜日の朝、ジンスを起こしたのは携帯の着信音だった。彼は何事かと飛び起き携帯を見ると、장호からだったので通話に応じた。장호は焦ってるような声色でやぶからぼうに「ワリい。ちょっと頼まれてくれ。昨日、ナナと夜メシ食ったんだけど、今も一緒にいるんだ」と言ってきた。

そして「どうしよう。言い訳考えてくれ」と懇願する。思いもしない急展開である。ヤツが속도전するなんて想像すら出来なかった。男女の一線を超えちゃったのね。要は無断外泊の申し開きに知恵を貸せという事だ。

ジンスは「중전마마〜 죽여주시옵소서」と冗談をかまして「隣にナナはいる?」と尋ねた。トイレだと言うのでジンスは「昨日、奥さんになんて言って出かけたの?」と聞いた。彼は「오랜 친구と一杯やるから遅くなる」と伝えたと答えた。ジンスは「お前の奥さんとウチのは、よく知る仲だから俺を理由に使うなよ。

同じクラスの男もマズい。そうだ。민족악기の誰かが地方から来て飲んだ事にしろよ。先輩にしとけば? お前酔っ払うと正体不明になるから、朝起きたらサウナだったことにするとか」と助言してしまう。ご丁寧に「帰る前に必ず電話して、携帯をロッカーの中に置いといたから反応出来なかったとでも言うんだな」と補足までする。ヤツの悪事に加担するのかと良心が痛むが、アリバイ工作の名案がどんどん浮かぶから不思議だ。

「まだホテルだろ?サウナが理由だから風呂入って。そしてピールか何か飲んで二日酔いのフリして帰れよ」と更にアドバイスすると「それイイっ!そうするよ。またな」と言い放って장호は電話をきった。ジンスは今の話を妻に聞かれてないか急に心配になった。

恐る恐る寝室を出て居間にいくと、誰もいない。テーブルの上にメモが置いてあった。<朝食はレンジに入れてあるからチンして食べて。後で電話かメールするね>と書いてあったので彼は人心地ついた。嘘話の大筋は伝えたが、장호は上手く加工して言い逃れできるだろうか?

次の日の午前中に장호からまた電話がきた。「妻に言い訳して謝ったよ。酒も程程にねって怒られたけどな。ただ最近のサウナっていいシャンプー置いてるんだねって言われた時はドキッとしたぁ」と話ながら今度おごるよだって。

「もう一つ報告あるだろっ」とジンスが追求すると「お前が今考えてる通りだよ。へへへ」と煙に巻く。「頼むから溺れるなよ」と忠告はした。ジンスは気持ちを仕事に振り向けた。前の契約が先方の廃業でポシャってしまい、次の仕事がまだ決まっていない。また営業先を探さなければならない。彼は保管してある名刺ファイルを取り出して吟味する

         続く