等身大のキャンバス①ー在日3.5世、優しい自分でありたい 少数派だからこそ

先週、朝日新聞に掲載された記事を知ってほしいと思って投稿しました。

【動画】「等身大のキャンバス」東京朝鮮中級学校美術部 宮崎亮撮影

この取材期間、生徒たちと真正面に向かい合い、様々な事にも真摯に対応してくれた朝日新聞記者の宮崎さんの記者としての心が入った記事です。

新聞記事はそんなに簡単に出来上がるもんじゃない、と思わせてくれる仕事と、生徒の懐に入り込みながらも人格を尊重してくれる人柄に生徒たちも宮崎さんに向け、ざっくばらんに話をしていました。

生徒の「素」が出過ぎた部分、もっと面白い部分は宮崎さんが泣く泣く「割愛」しているのもあります。文章の端々にある「生徒との距離感」も感じてほしいです。そんな、削り、磨かれた記事と動画を是非見てください!


いま子どもたちは:等身大のキャンバス【上】

「私はこの『コロナオール』という作品を制作したんですけど」

12日、東京都北区にある東京朝鮮中高級学校の体育館ホール。高級部3年の河慶恵(ハキョンヘ)さん(18)が市販薬を模した箱を手に語り始める。今春、コロナ禍でマスクなどの買い占めが相次いだ。「もしでたらめな薬でも、新型コロナが治るという薬が出たら買い占められるんじゃないかなと考えました」

視線の先は、同学年で部長の宋泰碩(ソンテソク)さん(18)が持つiPad。この日は、東京で開催される全国の朝鮮学校美術部の作品展の最終日で、展示への支援を募るため動画を撮影していたのだ。コロナ禍で重要な展示二つが中止され、部員らが秋以降にかける思いは強い。来年1月の部展「はじめての日常」では大きな会場を借り、クラウドファンディングで支援を募る(https://camp-fire.jp/projects/view/327224)。

同校は、日本で初の在日朝鮮人中等教育学校として、1946年に開校。授業はほぼ朝鮮語で行われ、朝鮮史などの民族教育のほか日本の教育に準じた内容を学ぶ。生徒数は中級部、高級部の計442人。部活動は強豪のラグビーやサッカー、舞踊などが知られる中で、美術部は異彩を放っている。

「ナァ(私)は朝鮮人だけど…」

「自由なんで。ウリハッキョの中で変な人たちの集まりっていうか」。旧校舎2階にある部室で、慶恵さんが教えてくれた。

部員は高級部7人、中級部2人。集中して絵筆を動かす生徒もいるが、椅子に座りスマホで何やらずっと検索する女子も。現代アートと言うのか、砕いたビー玉をジャラジャラとガラスのボトルに流し込み、ニヤニヤする男子。制作の手を止め、2人でふざけあう男子もいる。

慶恵さんが制作中の絵画はチマ・チョゴリを着る女性の絵だが、色彩は日本の着物に近い。「ナァ(私)は朝鮮人だけど、考え方や価値観は日本人に近いと思う。そのあいまいさを表現したくて」

「なぜ日本語を話せるんですか」と尋ねられ

大きな展示は年4回。部員は制作に加え、自ら展示方法を考え広報をし、校外のアーティストに参加依頼もする。来客にプレゼンをし、作品の意図を文章に書き冊子にする。顧問の崔誠圭(チェソンギュ)先生(53)は「自分たちで発表の場を作り、自由に表現するのが大事。運動部もチームワークや規律を学べる場だけど、自分の表現を外に出すことで育つ子たちもいます」。

美術室で。前列左から金璃瑤さん、李愛琳さん。女子生徒は授業中、制服のチマ・チョゴリを着る

慶恵さんは、父方から数えると在日3世、母方からだと4世になる。父方の祖父は、南北に分かれる前の朝鮮の慶尚南道から渡日。祖母は日本人だが、両親や自分は朝鮮籍だ。

同級生には韓国籍の子も日本籍の子もいる。家庭内で国籍が異なる場合も。都合や考え方で変更する人もいるからだ。「国籍が三つあるのが当たり前過ぎて、友だち同士でも話題にならないくらい」

しかし、日本社会ではこうしたことはあまり知られていない。そう感じたのが、都内の高校生による昨冬の美術展「中央展」でのことだ。生徒同士で作品のプレゼンをしていると、日本人の男子高校生から「みなさんはなぜ日本語を話せるんですか」と尋ねられた。

戸惑った。小学校にあたる初級学校から朝鮮学校に通い、接する日本人も在日の境遇を知る人ばかりだったからだ。「社会に出れば周りからは朝鮮人とわからない。見た目は日本人と同じだから」

この社会で少数派の自分だからこそ

昨春、美術部に衝撃を与えた出来事があった。部員らが市民団体のSDGs(持続可能な開発目標)を訴えるパレードに参加。平和や反貧困、文化祭の開催をアピールする中で、朝鮮学校が高校授業料無償化の対象外だと訴えた。部のツイッターで報告すると、「朝鮮学校はそんなパレードに出るな」との趣旨の投稿があった。部員が反論すると誹謗中傷が相次ぎ、アカウントが「炎上」した。

その後、慶恵さんは1枚の絵画を制作し、昨年6月の文化祭展示を迎えた。校外の約40人のアーティストらとともに出品したその絵の題は、「何の実」。

腕いっぱいに果実を抱えて歩く女性の絵だ。赤や黄緑のきれいな実もあれば、どす黒い色の実も。展示説明に慶恵さんは書いた。

河慶恵さんの作品「何の実」

あなたが通った場所に芽が生えた。その芽はやがて大きくなり木となって実がなった。その実はあなたが知らない誰かが、もしかしたら家族や友達が食べたかもしれない。でもあなたは誰があなたの実を食べたのか知る由もないだろう。反対にあなたも誰かが実らせた実を食べながら進んで行く。あなたはどんな実を実らせたのだろうか。そして、どんな実を食べながら進んで行くのだろうか。

自分の放った言葉が人に良く影響することもあれば、悪く影響することもある。「全員がそう考えて行動すればもっとよい社会になるのでは」と慶恵さん。卒業後は大学へ進むが、将来の目標は未定だ。でも一つ、この社会で少数派の自分だからこそ意識することがある。

「あいまいかもしれませんけど……。もし何か悩みを抱えている人がいたら、そういう人に優しい自分でありたいんです」

全国で計4903人が在籍する朝鮮学校

朝鮮学校は在日コリアンの生徒らの民族学校。前身は朝鮮半島出身者が戦後、民族の言葉を学ぶ場として建てた国語講習所だ。

授業はほぼ朝鮮語で行い、朝鮮の歴史や地理などの必修科目のほか、日本の中等教育に準じた内容を学ぶ。

文部科学省によると、学校教育法上の「学校」でなく、日本語学校などの多くと同じ「各種学校」。2020年は28都道府県の64校(休校3校)に幼稚部、初・中・高級部の4903人が在籍。10年時点では73校(休校9校)で、在籍者は8037人。生徒数はこの10年間で4割近く減った。

日本政府は、授業に北朝鮮を支持する内容があるなどとして高校授業料無償化の対象から除外。東京、大阪、愛知、広島、福岡の朝鮮学校側がこれを違法として各地裁に提訴した。大阪地裁で学校側が勝ち、判決は、補助教材で多様な見方を教えており「教育の自主性までは失っていない」としたが、大阪高裁は在日本朝鮮人総連合会との人事交流などを理由に教育基本法が禁じる「不当な支配」があるとして地裁判決を取り消した。19年に最高裁で大阪、東京、愛知の学校側が敗れ、広島、福岡は上告中。国連の人種差別撤廃委員会は日本政府に朝鮮学校生を差別しないよう求めている。

在日本大韓民国民団によると、韓国学校で「学校」扱いは大阪、京都、茨城の4校、「各種学校」は東京と大阪に各1校。在日だけでなく、ニューカマーの韓国人生徒も多い。

1 COMMENT

トラブルメーカーに困って💦

「やさしい自分で ありたい」
そうだよねー
ありがとう^_^
私が今抱えている悩みを 一掃させてくれました。

現在コメントは受け付けておりません。