おかしな娘のオモロイ話(17)ーヒーローになりたい(上)

ちゃん丸はヒーローが大好き。 ウルトラマンや仮面ライダー、ドラゴンボールの悟空などなど。最近の憧れヒーローはサイタマ。“ワンパンマン”という、大人向けのア ニメに出てくる主人公だ。サイタマは、どんな敵も「ワンパンチ」、すなわち1回のパンチで倒してしまう最強ヒーローなのだ。

散髪の日。ちゃん丸は床屋さんが大嫌い。 バリカンなんて見ただけで大号泣。ちゃん丸:やだ。ボク行かない。
私:髪の毛切ったら、サイタマみたいにカッコよくなれるよ♪
この一言が効果テキメン。
ちゃん丸:ボク、サイタマになりたい。髪の毛、切る!!
こんなに素直に了承するなんて…恐るべし、サイタマ。

床屋のおっちゃん:やぁ、いらっしゃい。今日はどうやって切ろうか?
ちゃん丸:サイタマみたいに、カッコよく切って!!!
珍しくちゃん丸は散髪台におとなしく座っている。
床屋のおっちゃん:サイタマ? 埼玉県?
私:とにかく短めでお願いします。ちゃん丸、サイタマになるために頑張れる?
ちゃん丸:うん!ボク、頑張れる!サイタマになるんだ!!
「サイタマになりたい」その一心で、ちゃん丸は苦手なバリカンを泣かずに耐えた。途中、迫りくるバリカンの怖さに、目に涙をため「サイタマになるんだ~!!」と絶叫しながら…

おっちゃんが手を止めて聞く。
床屋のおっちゃん:サイタマってなぁに?
ちゃん丸:一番強くてカッコいい、ヒーロー!!
床屋のおっちゃん:おぉ~、そうかそうか。ちゃん丸君はサイタマになりたいんだね。お母さん、サイタマの写真ある?
どうやらおっちゃんは、本気でサイタマの髪型にするつもりらしい。ヤバいぞ。 そこで、おっちゃんにサイタマの写真を見せた。
私:これがサイタマなんですけど…
おっちゃん、絶句。

サイタマはつんつる頭のスキンヘッドなのだ。 ちゃん丸をこの髪型にするのは、ほぼほぼ不可能。
床屋のおっちゃん:困ったねぇ~。
出来る限り短く整えてもらったが、子供のスキンヘッドなんてあり得ない床屋を出る時、ちゃん丸は初めて自分で髪型を見た。
ちゃん丸:…髪の毛がいっぱい残ってて、全然、サイタマじゃない…

ヤバい。これはややこしい。
私:ちゃん丸!!すごくサイタマに似てるよ!!
母は必死で盛り上げるが、一度落ち込むとなかなか気分が上がらないちゃん丸。 うーん、どうしたものかなぁ。 このままでは、多分今後一生、散髪に行ってくれない。 私は、ちゃん丸の気分をあげる作戦に出た。