おかしな娘のオモロイ話(21)ーよっちゃんのオモニ3

よっちゃんのオモニは市の自治体でも統率力を発揮している。 住んでいる市の国際交流会の会長をやっていて役員会や懇親会にも欠かさず出席する。

ある日の役員会は焼き肉屋さんでランチを食べながら行われた。焼肉定食が運ばれてくる。よっちゃんのオモニ以外はみんな日本人のおばちゃん。お皿の肉の枚数を人数分で割って… だから1人3枚というのがおばちゃんたちの暗黙の了解。それを自分の前で1枚ずつ焼いて食べる。これ、日本人の常識。一方、肉を網に載るだけ載せて順に焼けたお肉をパクパク食べる。肉に所有者を決めない。これ、在日の常識。

役員会は、いつの間にかただのおしゃべりのランチ会と化した。「あれっ?!」 日本人のおばちゃんがいきなり声をあげた。「あれっ、今ここに焼いてた私のお肉がなくなっちゃった!あれ?… やだ。私、食べたこと忘れてるのかしら?」皆を疑っているのに、おばちゃんはわざとらしく“ボケてるのかしら?”を装う。

「皆さん、お肉何枚食べた?」 おばちゃんが皆に聞く。「私は自分の分3枚よ」 「私も」… 皆“自分の分”3枚だけ食べたと口にする。「ねぇ、キムさん、キムさんは何枚食べた??」

さて、よっちゃんのオモニ。「え?私、枚数なんか全然数えてない!あるだけ食べてた!」 あっけらかんと言い放つ。 場は一瞬凍りついたが、すぐにおばちゃんたちの大笑いに変わる。「やだぁ!キムさんたら!全部食べちゃったの?1人3枚ずつよ自分の分を食べなきゃ~!」 「もう、キムさん、おっかしい~」

よっちゃんのオモニは、何をそんなに笑っているのか全く理解できない。でも、どうやら自分が“人のものに勝手に手を出した”と解釈されているのは空気で伝わっ た。

よっちゃんのオモニは店員さんを呼ぶ。 「すみません、お肉全然足らないから、もっと追加して!私、1万円出すから!」と言って財布から1万円を差し出す。おばちゃんたちの笑いは一層大きくなった。「なんだか悪いわぁ~。ね、ホントにいいの?」と遠慮しながら、おばちゃんたちはよっち ゃんのオモニが追加したお肉をどんどん食べていく。

きっと、この気前のよさとサバサバした性格がいろんな人に受け入れられる、よっちゃん のオモニの良さなのだ。