マー坊が高校1年の秋、私は夫と離婚し東京へ戻ることとなった。夫婦の愛情は冷めていたが、子供のことを考えるとやはり胸が痛む。夫婦で相談した結果、子供はやはり母親が育てたほうがいいという結論に達した。
家を出ることを息子たちに伝えると、3人は素直に私たちの意見に従ってくれたのだが、マー坊だけは違っていた。「ちょっと待ってよー。それはあくまで親の都合でしょ? 俺には俺の都合があるし俺の世界があるんだ。今、俺高校の生徒会長なんだよ。それが急に転向するってどうよ。それに俺は自分が関わる全てを大事にしたいんだ。だから俺はここに残る!」
「?」残るって…もしかして、兄弟のうち1人だけ父親と暮らすってこと?
マー坊の気持ちも分からないわけではない。当時、彼は高1にして生徒会長を務めていたし、学校以外でも子供の頃に所属していた、行政の子供連合という団体に世話係として参加していた。今引っ越すとなると周囲に多大な迷惑がかかるのは必至。だから父親のもとに残るというのである。
母親としては心配でしかたない。ましてや兄弟が離ればなれに暮らすなんて…かといって親のエゴでマー坊の世界を壊すわけにもいかない。悩みなやんだ末にマー坊だけは父親が引き取り、残る3人の息子を私が引き取ることとなった。
人生に最も影響を及ぼす高校時代、最も多感な時期に母親と離れる彼の心の葛藤は想像を超えるものであっただろう。彼は高1にして母親・兄弟と社会生活を天秤にかけ、社会を選んだのである。