末は大物?⑥

私の住む地域の夏の風物詩は祭りである。祭りの日には街中でお囃子が鳴り響き、20基以上の華麗なおみこしや山車が街を練り歩く。駅前ロータリーに設けられた舞台では、この日のために訓練してきた人たちによる阿波踊り、ヨサコイ・ソーランなどの楽しいダンスが繰り広げられ、周囲の屋台や露店には子供たちが群がる。

マー坊は祭りが大好き。前日は興奮して眠れず、当日になるとテンションマックス。祭りはっぴに鉢巻き姿で朝早くから町内を巡回するお囃子車を追いかける。4人の子を持つ母親としては兄弟で行動してほしいと思うのだが、マー坊は夢中になると周りが見えなくなるらしい。

ある年の祭りの日、毎年のように真っ先に玄関を出たマー坊。私は彼が玄関先で待っているとばかり思い、ほかの息子たちを引き連れて玄関を出ると… あれ? マー坊がいない! 私は自分の顔から血の気が引くのを感じながら必死で彼を捜した。何せ10万人を超える人が集まるという祭りなので、一度子供を見失うと見つけ出すのは至難の業だ。もう祭りどころの騒ぎではない。

「見つからなかったら、どうしよう…」
最悪の事態が脳裏をかすめる。私は泣きたい気持ちを抑えながら会う人あう人に尋ねて歩く。聞かれた人たちは私の形相にビックリしたことだろう。町内中を捜し回ってもマー坊は見つからなかった。魂を抜き取られたように何も考えられず家に戻ると…マー坊がそこにいる!

マー坊はお囃子車を隣町まで追いかけてゆき、隣町の町内会の寄り合い所で見ず知らずのおじいさんたちと仲良くなり、お茶とまんじゅうをご馳走になって帰ってきたらしい。

うれしそうに話すマー坊を見ていると、安堵と疲れがどっとあふれ叱る気にもなれなかった。