宅配便の送り主は本人と書かれていた。김が働く景品交換所に届いたダンボールにはスマホとある週刊誌が入っていた。週刊誌に付箋がついてるのはメッセージありの意味だ。「また2千円札かい。面倒だなぁ」とボヤきながら彼は付箋のページの表題と照らし合わせる。メッセージは「LINE見てね♥」だった。
(何でやねん!)とツッコみたいのを我慢しながら、届いたスマホの電源を入れる。ホーム画面にはLINEのアイコンがすでに貼ってあったのでそれを開いた。何のこだわりかは全く不明だが、上野マチ子名で送信されたモノがあった。
〈先日はありがとうございます。またいつでもいらして下さい。お待ちしております。〉つまり(指示があれば東京へ来る事。連絡を待て)と言う意味だ。
何かが始まるのかなと身が引き締まるが、この歳でシンドイかな~と不安もある。彼はすぐに雇っているアルバイトに事務所の電話で連絡して「急用で東京に行く機会が増えそうなので、その時は宜しくお願いします」と伝えると「入る回数が増えるのは有り難いし大丈夫でーす。」との返事。김は(準備OK)と独りごちた。
その日の遅い時間に覗き見が起動された。김はまたタバコを咥え吸うことで平静を装った。こちらも見ていることを知らない画面内のチヨンは何か囁いている。前に会った時と違う(濃い目のメイクもグッドだしセクシーだ。エエ感じやん。マジに親密な関係になりたい)とショウモナイ妄想をまた始める。
遠くの騒音で全部は聞き取りにくいが、「가게 〈품〉에 왔으면 좋겠다」は何とか聞こえた。日が変わった頃、김は届いたスマホで上野マチ子に「…是非行きたいお店があります…」とLINEで返信した。自分のスマホも満足に扱えないのに、もう一台持つのはややっこしいと腹が立ってきた。
その男はLINEの文面を変換して拍子抜けした。(너무 쉽지 않아)と思いながらもオンナの行方を追う手間が省けた事を素直に喜んだ。そしてチヨンに対する作戦の組み立てに着手した。さて、作戦名はどうするか……
続く