春のうららかさを感じよう

지영이는 보았다(第4弾)その3

あの日、김が松山に託したハナの事とは、彼女の在留資格を特別永住者に変えるための道筋だった。相手側の管理から遠ざけ、日本の法の下にハナを置くことで、誰であろうと彼女にうかつに手出しできなくなるから。

その近道は松山がハナと結婚(偽装でも良い)することだと김は言う。「ハナが日本人に〈帰化〉するならそれでも構わない。まずはハナをあなたの税理士事務所なり、知合いの会社にリクルートすれば、結婚までの自然な流れを作れると思いますよ。私なりに考えた粗末なシナリオですがね。」

松山は荒唐無稽な話だと思った。でもその意味するところを吟味すると納得できる点がある。ハナを危険なゲームから引き剥がすには有力な方法だろう。ただハナにどう話を切り出すか…

週明け早々韓国大使館の窓のない部屋では、チヨンに対する審問会が行われていた。厳粛な面持ちでそれに臨んだチヨンは、審問官の顔ぶれを見て驚かずにはいられない。情報院の高級官僚と紹介された年配の男は右派政権の時代、謀略を駆使して事件まで捏造し、その過程で味方要員まで切り捨てることもいとわない悪名高い人物だったから。

ゾンビのようにまた第一線に復帰したのは、何を示唆してるのだろう?でもチヨンの警戒とは裏腹に審問会は淡々と進行された。佐藤の件では担当上司からどういった指令があり、何を調べていたのかの報告は要求された。

チヨンは監視ソフトの事や、総聯系同胞の金の流れを掴む任務に従事していたことや、上司から情報収集の永続を求めるなら、松山との結婚も効果的な手段だと言われたことまで包み隠さず吐露した。審問会では松山と辛の会話録音や諸々の記録事由でスマホを没収されてしまったが。

新任の担当上司が紹介され、会が終わってその上司から新しいスマホを渡された。当面は〈품〉を拠点にした活動を続行して良し。松山に対する監視ソフト再使用も許可された。でもチヨンはそうしなかった。佐藤の件の覗き見で、先走ってしまった教訓からだ。昨日松山と会って、生の会話から多くを得られると改めて思ったし。

でも、上司から伝えられなかったことがある。上部機関の秘密指令でスマホにはチヨンに対する監視ソフトが仕込まれているのだ。チヨンは今後、味方である情報院からその動向を監視される。そしてその任に就いたのはユミだった……

          続く