春のうららかさを感じよう

지영이는 보았다(第3弾)その8

ハナと別れた後、松山は別の約束で人と会った。不忍池のベンチに座って松山を待っていたのはあの男(강홍)だった。

男は松山がベンチに腰を下ろすやいなや「頼み、やったか?」と聞く。中国か朝鮮の訛り混じりの日本語は慣れない。松山はハナと数度会って、こちらの芝居を信じたようだと話した。男は保険措置が功を成したと安堵しながらこう続ける。

「佐藤の件何だ?俺それ知らない」と。松山は自分なりに思う事があって佐藤の話を吹聴したし、その件には口出しするなと強調した。男はスマホコビーが完全だったなら松山から話を聞く手間が省けたのにと悔やみながら「また話してくれ」と言い残して立ち去った。

松山は「違うんだよなぁ〜」とボヤキながらその場を離れる。彼は自分がエージェントだと思ったことはただの一度もない。男に頼まれた芝居をしている認識しかない。数年前、泥酔して帰る路上で半グレに絡まれた時、助けてくれたのがあの男だった。その縁で男の店に行くようになった。男は松山が来店する度良くしてくれたし、正規の料金よりかなり値引してくれた。

「店長、私にできる事があれば言ってね。」
そして今回、男は「何も聞かず、あるアガシにひと芝居打って」と頼んできた。そのアガシがハナだ。最初は気楽に考えていたが、芝居は一度でなく二度、三度になりセリフの細部まで演出してくるし、通話まで指図するから呆れてしまう。いやっ、おかしいと当然思うし、複雑な事柄に巻き込まれたと心配する。

松山が「もうや〜めた」と言えばそれで終わりだが、彼は辞めない。何故なら彼はハナに恋してしまったから!王様ゲームの日に一目惚れし、同伴を重ねて容姿だけじゃなくその利発さや自然体に参ってしまった。やってることがハナを害する事なら彼は我慢ならない。この芝居の行く末を見届けてハナに懺悔しよう。辛さんにもいつか事情を話さなければ。

ただ佐藤昇の件は芝居ではない。松山は佐藤を心底嫌っているし、奴との関わりを絶ちたいと願っている。奴の財務内容は要領を得ないものばかりで、深入りすると税理士の仕事さえ危うくなりそうだ。ハナの前での愚痴は本当だし、中国でのビジネスも嘘にはならない。話はかなり盛ったが……

          続く