ヒョングは頭を抱えていた。机の上には旧校舎の写真や建設中の校舎の写真、古い名簿、いろいろなスクラップファイルなどが山積みに置かれている。文学部出身のヒョングがこれらの資料を参考に新校舎竣工10周年記念行事の脚本を書くことになったのである。(こんなのやったことねぇし…えらいこっちゃな〜)
ヒョングは焦っていた。(任されたからには頑張らないと…)。締め切りの日時は迫っている。だが、脚本を書いた経験のないヒョングの筆は全く進まない。学生たちと接していても始終そのことで頭がいっぱいだった。担任クラスの授業を終えて教室を出ようとするヒョングにミョンジャが近寄ってきた。
「ソンセンニム、話があるんですけど…」「悪い。急ぎでなければ、あとにしてくれないか?」「…」ヒョングはミョンジャの顔をろくに確認しないまま教室を出た。その後ろ姿を眺めるミョンジャの表情は今にも泣きそうだった。
ミョンジャの実家は白浜で焼肉店を経営している。ミョンジャは初級部の頃から寄宿舎で生活していた。バレー部の中心的な選手で、中央体育大会で優勝を決めた渾身のアタックは記憶に新しい。背が高く活発な性格だが、運動会以降は元気がないように見えた。
だが脚本のことで頭がいっぱいのヒョングはミョンジャのシグナルを見落としていたのだった。