同窓会の開催は十数年ぶりになる。その連絡はジンスを間違いなく興奮させた。前の同窓会もそれなりに楽しかったが、みんなまだ若かったし、大学当時のクラスの雰囲気を引きずった感が色濃かった。
酒が進むにつれ男子も女子もかつて仲良しだった者同士が固まってしまったし、ジンスも例外ではなかった。十数年の歳月は皆をどう変えたろう?過ぎた時間のおかげで少なくとも今のジンスには過去のわだかまりはあまりない。
현주と再会した事や태영と飲んだ事が、過去に対する中和作用をしてくれたのも事実である。彼の中に、過去を素直に見つめ、楽しく懐かしむ気持ちが芽生えたのは確かだ。同窓会は현주と公に再会する機会でもある。それは願ってもないことだ。
彼は현주に電話しようとした。携帯にまた着信があった。현주からだ。以心伝心じゃんとジンスは得意気だ。
「동창회이야기 들었지.ジンス参加決まりや聞いたわ。少なくとも今年中にまた会えるなぁ」と言うので「그럼요. 강현주と会えるから行くに決まってんじゃん」と答えた。「嬉しい事言うやん。でもこっちで会う約束は同窓会とは別やから。」、「わかってますって。個別でも会いに行きますよ。」、「믿는다. ジンス。동창회の日程決まったらまた話そな」と현주は電話を終えた。(心をくすぐるじゃん)と彼はニヤける。でも次の通話やメールが、また事務的になるのかなと一抹の不安が頭をよぎる。
あくる日、事務所に出勤した彼が最初に取り掛かった作業は、早割り航空券のネット検索だった。宿泊は含まれないから旅行会社はお呼びでない。格安航空券サイトを何社か見つけてお気に入りに保存した。半年以上前の予約購入になるから、新幹線よりもかなり安いチケットをゲット出来そうだ。早目に日程が決まり変更がない事を祈るばかりだ。
その晩、ジンスはリ先輩に誘われアフターをご一緒した。この日は定番の韓国料理だ。ジンスは辛いモノが嫌いじゃないが大汗をかくので一人飯の時は敬遠する。でもお付合いだから、先輩がオーダーするメニューを汗を拭き拭き胃袋に入れた。
食後は、リ先輩ごひいきの例の가게。ミミは日本に戻っていないから가게にお目当てもいない。席にきたのは毎度のチーママとナナだった。先輩がチーママとイチャイチャしているそばでジンスはナナと会話をした。「장호오빠는 오늘 같이 안와? 나 그 오빠 좋은데」とナナはヤツの話ばかりである。
(こりゃまた新展開か?)
ジンスは悪戯のつもりで장호を褒めまくり、「ナナ는 딱 장호 스타일이야. ナナ가 전화하면 껑충껑충 뛰여 올 걸」とワンプッシュしてみた。ジンスはその軽率な行為が、やがて장호の平穏な日常を大きく揺さぶることになろうとは夢にも思わなかった。
続く