新宿東口を出たジンスは、行き交う人の波を縫うようにして歩いていた。肩をトントンされたので振り向くと「오래 간만에 뵙습니다」と見知らぬ女性が声をかけてきた。ストレートのロングヘアーでキリッとした顔立ちに、ジンスは見惚れる。彼は「아, 예」としか反応出来ない。
女性は「고정선입니다」と緊張の面持ちで自己紹介する。ジンスは通行の妨げになるからと、彼女を歩道の端へ手振りしながら導いた。(女優の고소영系じゃん。すげぇタイプ)と心が沸き立つ。伊勢丹前にはすでに선미が立っていた。
「あれっ、二人一緒なの?」、「いや、今そこで会って。姉さんご無沙汰です。안녕하십니까?」、「ハハハ 인사が先よね。ジンス、久しぶり〜。정선、お疲れ〜。」、「언니 나 왔어요」と挨拶のトライアングル。ジンスと정선がぎこちないのを感じとり선미は「なんか、二人いい感じじゃん」と一発かますのを忘れない。
ジンスはこの時ようやく정선に「인사 늦었네요」と頭をペコリ。一行は선미が予約した居酒屋の個室に移動した。席についてオーダーを済ますなり선미が정선に目線で合図する。
それにうながされ「ジンス씨、お会いできて嬉しいです」とかしこまって喋りだす。彼女の話しを聞くと、忘れていた東京駅の出来事が古いVHSテープのようにノイズ入り映像で甦った。やがて映像は鮮やかになり、현주の姿まで映し出す。「なにアンタ、緊張してんの?なんか言いなよ」と言う선미の声が再生を止める。
「騙されたくらいにしか思ってなかったけど、만났으니 다 해소됐습니다. 송구해요」と、정선を真っすぐ見た。彼は(ホントに綺麗な人だ。仲良くなっちゃえ)と思い、スキンシップモードへと態度を切り換える。정선がトイレに立った時は、素早い目測でプロポーションチェックもした。「アンタ視線がいやらしいよ。でも素敵なコでしょ。仲良くしてあげてね」と선미。「奥さん悲しませない程度にね」と注意もする。
「ジンス씨じゃなくて오빠って呼べば?」と선미が정선をリラックスさせたのもナイスフォローだった。정선が「그래도 될가요?」と聞くので、ジンスは「그러세요」と言いながら「一回呼んでみて」と催促した。
「ジンス오빠」「もう一回言って」「ジンス오빠」「그래 정선아」としつこいので、선미が「アンタら殴るよ」と笑う。この日、仕事の事は話題にならず、お互いの人となりの話が面白おかしく行き交った。ジンスと정선もかなり親しくなった。散会間際に정선が言った。
「내 미용실에 꼭 놀러오세요.マッサージもあります。전화할게요.」
「あっ、それイイね。ジンス、彼女のエステサロン見学したら?」と선미が付け足す。ジンスは絶対行くつもりだ。彼の煩悩はマッサージの方に過剰反応している…
続く