【健康】敗血症とは何か

親しみやすい人柄でテレビや映画などで幅広く活躍した俳優の渡辺徹さんが11月28日、敗血症のため亡くなりました。61歳でした。

敗血症とは感染症がきっかけとなって起きる、二次的な症状です。具体的には、何らかの感染症を起こしている細菌などが増殖して炎症が全身に広がり、その結果、重大な臓器障害が起きて重篤になっている状態のことをいいます。敗血症を引き起こしたもととなる原因を見つけ、その治療を早期に開始しなければ、命に関わる危険もある病気です。

どんな感染症でも敗血症を起こす引き金になる可能性があり、特に、免疫力がまだついていない乳幼児や高齢者、糖尿病などの慢性疾患や、がんなどの基礎疾患がある人、病気治療中で免疫力が低下している人は、感染症から敗血症を起こすリスクが高いと言われています。

敗血症の原因は？

原因となる細菌として代表的なものに、連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌などが挙げられます。こうした細菌に感染することで、皮膚の化膿、肺炎などの呼吸器感染症や肝臓、腎臓、腸などの感染症など、さまざまな感染症が最初に起き、免疫力が低いとそこから敗血症が起きやすくなります。

また、細菌だけでなく、インフルエンザなどのウイルスやカビなどの真菌、寄生虫などによる感染症も原因となり得ます。カテーテルを挿入することによる尿路感染や、人工関節などを使用している場合にも注意が必要です。この他に、白血球の中の一種である好中球が減少する「好中球減少症」の状態だと、感染症にかかりやすくなり、敗血症を起こす可能性が高まります。好中球減少症は、遺伝性による先天的なものと、後天的なものがあり、抗がん剤による化学療法を受けているがん患者にもよく見られます。

敗血症の症状は？

敗血症では何か1つの症状や兆候が出る、というようなことは基本的にはなく、障害が起きている臓器によって、さまざまな症状が起きます。初期の主な症状としては、悪寒を感じたり、全身のふるえや発熱（高熱になることが多い）、発汗などが見られたりすることが多いのです。

症状が進行すると、心拍数や呼吸数の増加、血圧低下、排尿困難、意識障害などが生じてきます。重症化してしまうと、腎不全や肝不全といった臓器不全、敗血性ショックを招き、命を落とす危険が高まります。また、皮下出血が見られる場合には、播種性（はしゅせい）血管内凝固症候群（DIC）を併発した可能性があり、やはり重篤な状況になります。

検査・診断について

敗血症の原因となっている感染症を確認するために、胸部エックス線や全身CT検査などの画像診断を行います。また、血液検査や原因菌を特定するための培養検査も実施します。ただし、感染症治療のために抗菌薬が用いられている場合は、菌を培養できない可能性もあります。

感染症があり、その上で意識障害がある、収縮期血圧が100mmHg以下、1分間の呼吸数 22回以上、の3つのうち、2つの要件を満たしていれば、敗血症の可能性が高いと言われています。確定診断のためには、さらに臓器障害の程度を調べる必要があります。

敗血症の治療

感染症の原因となっている病原体を早急に特定し、治療を開始します。薬物治療であれば、細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬、真菌の場合は抗真菌薬、寄生虫の場合は抗寄生虫薬を用います。感染症の状態によっては、外科的治療が必要になるケースも。

症状が進行している場合は、検査結果が出る前（原因菌が判明する前）から、抗菌薬を投与する場合も多いといいます。その際、原因菌によって薬剤に耐性があることもあるため、どの抗菌薬を用いるかは、よく検討する必要があります。敗血性ショックが起きている場合は、血圧を上げるために大量の輸液や昇圧薬を点滴投与し、同時に酸素吸入や人工呼吸器を使って、高濃度酸素を投与するなどの全身管理を行います。この他、人工透析や、血糖値を下げる必要があれば、インスリン静脈内注射を行うなど、状況に応じた治療が行われます。