【投稿】ご祝儀の相場

日本では「ご祝儀貧乏」という言葉がある。慶事が重なって、結婚式に招待されることでご祝儀の出費が続き、財布がキツイということを表現した言葉だ。そんな「ご祝儀」をめぐって、韓国で先日、SNSでの投稿が議論を呼んだ。

「夫婦二人で1万円」を批判される！

投稿の内容は、職場の先輩の結婚式に投稿者の男性が妻と二人で出席し、ご祝儀として10万ウォン（日本円で約1万円）を包んだ。しかし、その金額をめぐって先輩から結婚式後に批判を受けた…というもの。

日本でも時折、ご祝儀の金額をめぐってネット上などで、議論が起こることも珍しくはないが「おカネに関する話題」を面と向かって相手に言うことは“タブー”とされているところもあるため、心の中でモヤモヤを抱えるという感じであろう。

「日本」と「韓国」の違い

日本では「ご祝儀貧乏」という言葉が表すように、決して安いものではなく、基本的には3万円が相場で、その内訳は披露宴の食事や引き出物で約2万円、「お祝いの気持ち」として1万円というものとされている。しかし、それはあくまで“相場”であって、新郎新婦から見た立場や関係性、親密度によってその額も変動する。

一方、韓国の場合は一言で言えば、結婚式自体が実にあっさりしたものだ。

挙式自体も30分ほどで終わり、その後は新郎新婦と両家の親族を交えた「幣帛（ペベク）」と呼ばれる伝統儀式を行う間に、招待客達は食事をして帰るといったパターンだ。

韓国では「友達の友達」も来る

来賓客のお言葉や余興といったものは一切なく、むしろ結婚式後の二次会、三次会で友人同士で気楽に楽しむといった流れが定番だ。

よって、韓国の場合は「ご祝儀＝食事代」という認識で、日本と比較して安いのはこのためなのである（ちなみに結婚式における食事とはビュッフェ・スタイルで、ホテルや結婚式場があるビュッフェ・レストランでの飲食となる）。

また、日本では招待客数がきっちりと決められているけど、韓国はそのあたりは実に緩く、「友達の友達」が来たり、「子どもも一緒に連れて来たり」と飛び入り参加的なものも多い。

このため、記帳された出席者の名前とご祝儀を照合した上で、食事代が精算される形になる。

急激な「物価高騰」の余波

今まで韓国のご祝儀は、大体一人あたり3万ウォン~5万ウォン（約3000～5000円）とされてきた。しかし、今回、「夫婦二人で10万ウォンという金額は非常識」と、先輩である新郎が主張する背景には、昨今の経済事情も絡んでいるんだろう。

世界的な物価高騰の影響は韓国も例外ではなく、特に外食、自炊を問わず食費の高騰は著しい。飲食店のメニューやスーパーの食料品も短期間で値上がりを繰り返しているということもままある。こうした中で、ホテルや結婚式場のビュッフェの料金を見てみると、現在では一人あたり6万ウォン~7万ウォン（約6000円~7000円）である。

学生や社会人1、2年目の若者達にとっては「祝いたい気持ちはあってもご祝儀が負担だ」という本音も多く聞かれる。このため、「食事をせず挨拶のみの場合は5万ウォン、食事もする場合は一人10万ウォン」という相場が定着しているという。

なので、前出の掲示板で不満を訴えた男性は、妻と二人で10万ウォンというご祝儀は、やはり現状の物価高騰を鑑みていないとして「NG」と指摘したんだろう。

「負担」になりつつある結婚

ここ数年、コロナ禍の日本では、冠婚葬祭を「身内だけで」「最低限の人数で」と簡素化、縮小して行う傾向にある。韓国でもコロナ禍による過去3年間は結婚式も葬儀も大幅に控えられ、日本と同様にこうした形が定着するかと思ったが、やはり「冠婚葬祭は大事」という意識は、中高年を中心に根強くあるようだ。

韓国でも20~30代の若者を中心に、非婚化と晩婚化がどんどん進んでいる。現在では女性が20代中盤で「結婚する」と言えば「早すぎる」「若いのに」というのが周囲の反応だそうだ。それほど、今の韓国の若者にとっては「20代で結婚」というのは珍しい選択肢になりつつあるということかもしれない。

カジュアルであった韓国の結婚式も、やはり時代の流れとともに「お気楽に」というわけにはいかなくなっていくのかもしれない。そうなれば、より一層、結婚から遠ざかる人が増えてしまう可能性もある。

また、子どもの1歳の誕生日を盛大に祝う「トルチャンチ」といった冠婚葬祭行事が多い韓国では、お金をめぐる問題はこれから事あるごとにさらに問題提起や論議が起こりそうな気がするのだ。

そういうワタシも今月末に同級生の長男の結婚式がある。いくら包むって～？それは想像にお任せすることにしよう。