【投稿】知らなくてもいいこと

私はカニが好きで、毎年冬場になると旅行も行かないのに旅行代理店に設置されたスタンドから、カニを食べに行くツアーのパンフレットをゲットしている。カニといえば、今は北陸への便が良くなったので、新幹線に乗れば、新潟や北陸方面にはあっという間についてしまう。

でもカニが好きすぎて、知らなくてもいいことまで知ってしまったのだ。

知らなくてもいいこと、それは「カニビル」。タランティーノ監督作「キルビル」の響きに似たそれは、カニの甲羅に卵を産み付けるヒルのことだ。あの黒い斑点の正体はカニビルの卵と知ってしまったら最後、手放しで大好きだと言い切る自信がなくなった。

これに似たようなケースで言うのもなんだけど、先日、こんなどうでもいいようなことでカニビルを思い出してしまった。

この歳になると帯状疱疹にかかりやすいと聞く。帯状疱疹とは水ぼうそうのウイルスだが、高齢になるほどこの病気にかかる率が高くなると聞く。今年の4月からは東京都でも帯状疱疹ワクチン接種にかかる費用を助成してくれるみたいなので、かかる前にさっそく打とうと思ってるんだが、女房が帯状疱疹にかかり痛くて痛くてしょうがないらしい。

お腹から背中にかけて、猛烈に痛いというので、どのような状態か服を脱いで見せろと言うと、自らシャツを脱ぎ始めた。

「えーっ！」
この世には知らなくてもいいことがある。妻のカニのように痩せこけた背中にある赤いドットをしばし見つめながら、俺はカニビルのことを連想していた。