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【スマホ小説】ボス 51

帰国の途に着いたハヌルは遠ざかる日本の街を見ながら(もう、この国に来る事はないわね)と寂しげに思った。昨晩のボスの言葉が酔っ払ってぼんやりとした記憶の中でもはっきりと刻まれている。

(何か勘違いしていませんか?私はあなたを好きだと言った事もないし思った事もない…もう、電話しないで下さい…)考えるほど胸がえぐられる気がする。

となりでハヌルの様子を心配そうに伺っていたチはハヌルを力付けようと「もう、済んでしまった事はしょうがないよ。明日から仕事に打ち込んで嫌な事は忘れようね」と明るく言った。「結局私の1人相撲だったのね」とハヌルはボソリと言ってリクライニングを倒して目をつぶった。

「ふ〜ん、結局二人は結ばれなかったんだね」と路子はスジンを見ながら寂しそうに話した。「で、この真相はいつハヌルさんは解ったの?」と母の春江が聞いた。スジンは遠い目をして「それがね…意外な線からハヌルさんの耳に入ったんだ。あれはその次の年の2002年9月の事だったんだ」

ハヌルは心の傷を癒しながら仕事に没頭していた。そんなある日、MBCテレビで在日の朝鮮学校に通う子供達の公演がソウルであると宣伝をしていた。(オギは元気なのかな?会いたいなぁ。そう言えばオギは舞踊部って言ってたよね)

もしかして…との淡い期待を持ってMBCに問い合わせると出演者の名簿を送ってくれると言ってきた。ハヌルは早速お願いをした。次の日、早々に事務所にバイク便で名簿が送られてきた。

焦る気持ちを抑えて名簿に目を通した。(ん〜と、東京中高舞踊部…チェ、チェ…あ、あった!崔香玉…そうか〜オギが来るんだ〜)一気に期待に胸が膨らんだ。と同時にボスとの苦い思い出が甦り、少し気が重くなった。

9月4日公演当日。ソウル教育文化会館には大勢の観客が押し寄せた。日本と言う異国の地で、民族の心を守りながら育つ在日の子供をひと目見ようと、沢山の人が集まって来たのだった。

今回東京中高が準備した舞踊は、日本の地でチョゴリを引き裂かれた事件を題材にした群舞だった。題名は『竜巻』。

朝鮮バッシングが起きる度に繰り返されて来たウリハッキョへの暴言と暴力。その差別に立ち向かい打ち勝って来た同胞たちの生き様を象徴するように主人公が晴れやかな表情で新しいチョゴリを着るクライマックスは在日同胞の、ウリハッキョ卒業生、在学生の誇りその物である。

舞台裏で出番を待つオギは胸の高まりを抑えられずにいた。公演もそうだが、何より大好きだったハヌルが会いに来ると言う事が、オギの心を躍らせるのであった。

1時間後オギは舞台に立っていた。心ない日本人によりチョゴリを切り裂かれた場面から始まり、国や自治体のあからさまな差別、そして降り注ぐ暴言の数々…だが、在日同胞は負けなかった。胸を張り差別に堂々と立ち向かい新しいチョゴリをまとう場面では涙と拍手に館内が溢れた。オギはスポットライトの中で知らぬ間に流れる涙を拭う事もなく最後のポーズをとった。

割れる様な拍手がオギ達を包んだ。そして舞台袖にはハヌルが両手を広げてオギを待ち続けていた。

続く

1 COMMENT

チョロは元気かな?

やっぱりねっ😊 男女の絆って、そう簡単に切れないですよね~😍
なんたって、オギからしたら、ハヌル=オンマなんだもんね~
ボスの陳腐な演技なんて、すぐ見破られちゃう💦
サンホ会長の約束は、一応果たしたんだから、ここからは自由恋愛、自己責任😊
がんばれ~ オギ~🙌
んで? んで? ハッピーになれるんですか?💦

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