1本の樹にもー新米教師奮闘記㉝

ヒョングは今日も受話器を握っている。白浜のミョンジャの家に行ってきてから2週間、毎日ミョンジャの父親に電話をかけているのである。電話が朝の日課となっていた。

「…アボジ、そんなこと言わないで、もう一度考え直してください」「あんたもしつこいな」「ミョンジャの将来を考えて…」「忙しいから、もう切るで」ガチャン。ツーッツーッ…。今日も途中で切られてしまった。

「ヒョング先生も粘りますね」チソン先生が呆れ笑いを浮かべながらヒョングをおちょくる。だが口調は否定的ではなかった。「石の上にも三年言いますやん」「だけど、ミョンジャのアボジはえら迷惑やな。ハハハ」「諦めなければ、必ずどないかなるもんや。世の中っちゅうもんは」先生たちは口々に好き勝手なことを言っているが、それでもヒョングの行動を好意的にとらえてくれた。

「先生たち、簡単に言わないでくださいよ。こっちは必死なんですから… 今日は話せたからまだいいけど、昨日なんか電話に出たとたんにガチャンですよ」。ヒョングが頭をかきながらグチるとチョンファがすかさず「でも諦めないんですよね?」とイタズラっぽくヒョングの顔を覗く。

チョンファの顔が突然目の前に現れたので、ヒョングはなぜかドキッとした。そんな気持ちを悟られまいとヒョングは慌てて立ち上がった。「さぁ、統一試験だ! 勉強させないとな」そう言ってヒョングは慌てて教室へと去っていった。