地球温暖化の影響で、この夏も連日猛暑日を記録していた。盆休み前のジンスの仕事は多忙を極めている。かき入れ時前のパチンコ店は、軒並み改装や大がかりな新台入替をするので工事は目白押しだ。徹夜作業は体力を容赦なく奪うので、ジンスはその他の私生活に気を回す余力がない。정선からの連絡にもなかなか応対できずにいる。
これまで彼は、2度ほど彼女と恍惚の時を過ごした。親密度が増すにつれ、彼女の会いに来てコールも頻度を増す。忙しいと言うと癇癪を起こしたりする。最初は可愛く感じたが、最近はウザいと思うこともある。仕事が彼女との密会を許さないから仕方ないのに。あと一つ仕事を片付ければ一段落する。そんなある日、彼の携帯に同級生の미화から着信があった。
「アタシ미화よ。話せる?」、「どしたの?」、「정혜と남식のことだけど、私の誤解だったみたい。ゴメンね。」ジンスは「何もないなら良かったじゃん。」ととぼけた。噂話に尾ひれはつきものだし、人を介するほど事実が歪むのが常だ。噂話のトップランナーの미화が、남식の件を知らないままなのは朗報だ。でも미화の次の質問がジンスを緊張させる。
「アンタ현주と連絡しあってるの?同窓会の相談で集まったとき현주が誰かと通話してたって聞いたけど、それアンタでしょ?」と言うので「誰が言ったの?それに電話が何かマズいの?」とわざと聞き返した。「別に。前に昔の話アンタにした事で현주怒ってたからさぁ。電話し合う仲なら文句言ってやるわよ。それと、たまには私にも電話して」と通話を終えた。やはり女の触覚は侮れないと、ジンスは警戒度をアップさせた。
学校が夏休みで현주から連絡はない。소조지도かなと想像するが、自宅もあり得るからジンスも電話出来ない。この時期、仕事が忙しいのが何よりだ。彼が盆前の最後の仕事を瑕疵なく仕上げたのは、木曜日の深夜0時前だった。彼は정선に会おうと決めた。
撤収する工事業者に新宿辺りで降ろしてと頼んだら、どうぞと言うので車に乗せてもらった。車中から彼は<急だけど、多分午前1時頃미용실の近くに行ける>とメールした。メールの返信がないまま車は新宿に着いてしまい、ジンスはお礼を言って降りた。そして今度は彼女に電話をかけた。何度かけても留守電のガイダンス。
遠目に미용실の明かりが灯ってるのが見えるのに。仕方なく留守電にメッセージを入れながら、ジンスはマンションの方に行き外から部屋の場所を眺めた。真っ暗だった。(なんか俺ストーカーみたいな事してるな)と腹が立って来た。タクシーを拾って帰路につく彼の心中は気落ちよりも怒りが勝っていく…
続く
そろそろ引き時じゃない?ジンス君。仕事終えたら真っ直ぐ帰りなさい。