春のうららかさを感じよう

ジンスーMy love ⑤

「남편は厳しいけど働き者や。結婚してから金銭的な苦労しなかったから有難い人やね。私がまた教壇に立ちたい言うたら家の事や子育てちゃんとする条件付きで許可しはったしな」と현주はしみじみと話す。

「妻と母親と先生の三役じゃ大変だよね。思うに현주は手抜きできない性格だからきっと毎日頑張っちゃってるんだよね」と慰めトーンで応じてあげるジンス。夜10時を過ぎた頃二人は3軒目になるカラオケボックスにいた。狭い部屋なのでくの字型に座って話し込んでいる。

「ジンスはわかってくれるんやね。何かめっちゃ嬉しいわ」と語ると同時に彼女の目から一粒の涙がこぼれ落ちた。현주は彼の手のひらに自分の手を重ね「会いに来て良かったわ。고마워, 정말이야」と続ける。

彼女が何故来たのかに対する答えなんだなとジンスは理解する。これからも현주は三役を続けるだろう。でも非日常でちょっと一息つきたかったろうし家族ではない誰かに褒めてもらいたかったに違いない。ジンスはわざとおどけて「아이고 우리 현주 기특해」と言いながら軽く彼女の頭を撫でてあげた。彼女は泣き笑い顔で「바보」と一言だけ返した。

彼女はジンスの現状を質問し「ウチは仲良くやってるよ。妻には感謝しかない」との話を聞いて微笑んでいた。お互い自分の夫や妻を悪く言わないのがフェアで心地良い。

현주がトイレに行った時にジンスの携帯にショートメールが届いた。開くと「ソウル着きました。ご恩忘れません」とあったがすぐ消去した。

二人はお互いの持ち歌を披露しあった。ジンスの歌唱力は普通だが韓国の<사랑을 위하여>を情感込めて唄った。「좋은 노래やね. コリアンクラブで鍛えたん?」と茶化す현주。

彼女は<未来へ>を選曲した。透き通る声で優しく歌う姿にジンスはしびれる。愛らしくてキスしたい衝動に駆られる。二人は話したり笑ったり歌ったりしながら今宵の思い出を頭の中に書き続けた。歌の予約曲が途切れた時彼女は「저はホテルやから大丈夫やけどジンスは?」と心配顔で聞いてきた。

先輩に泊めてと頼んであったのでその通りに伝えた。ジンスの仕事はパチンコ屋の内装工事の請負い業。夜行形の仕事柄外泊機会は多い。ジンスはこのまま彼女を帰していいのかと自問自答した。でも彼女が来た訳を考えると「さようなら、またね」が正解に思える。

日付が変わる頃、二人はカラオケボックスを出て第一ホテルに歩いて向かう。入口前で軽くハグし、お互いの背中をポンポンと叩きあった。そして次は関西で会おうと約束し名残惜しそうに見つめ合う。ジンスの心の声が(キスしちゃえ)と吠えまくっている。

動こうとした刹那、彼女は「明日大阪着いたら携帯に電話するわ。ジンス必ず会いにきてや」と言い残してホテルの中へと消えていった…

         続く