春のうららかさを感じよう

おかしな娘のオモロイ話(24)-佐々木くん

佐々木くんは私の前職の同期。歳も一緒で、お互いに結婚した時期も一緒で結婚相手が同級生なのも一緒。「いつか夫婦同士でごはん食べに行きたいね」なんて話し合っていたくらい。だけど、、、

お昼。いつも私は自分で作ったお弁当を持参。佐々木くんはコンビニ。コンビニから戻って来て、レンジで温めて席に戻ってくる。佐々木くんが手に持っている「お弁当」を見て私はビックリ仰天した。

なんと佐々木くん、豆腐を持っている。どうやら、コンビニで豆腐を1丁買ってきたらしい。それを会社で容器に移して、豆腐が浸かっている水に醤油を入れてレンジで温めたようだ。
私:???佐々木くん、お昼それだけ?
佐々木くん:…まぁね。
気まずそうに、佐々木くんは背中を向けて、そそくさと食べはじめる。ダイエット中なのかな? でも佐々木くんは太ってない。

それから次の日も、その次の日も、席でお弁当を食べる私と、豆腐を食べる佐々木くん。会社の先輩にお昼に誘われたけど、私はお弁当を持って来ていたので断った。佐々木くんは…
佐々木くん:すいません。ちょっと今月お金が厳しいんで…
そう断って、また豆腐を買って食べていた。

耐えきれず、佐々木くんに聞く。
私:佐々木くん、明日お弁当、作ってきてあげようか?
佐々木くん:…ホント?!
私:明日だけね。ホントのホントに残り物だからね。期待しないでね。

翌日、私は本当に手の込んでない、いつも通りの残り物を詰めたお弁当を佐々木くんに渡した。佐々木くんの目が輝いている。
佐々木くん:ありがとう!!

食べながら佐々木くんが話し出す。
佐々木くん:…うちの嫁さぁ、ディズニーが大好きでさ… だから新居もディズニーランドの近くに引っ越したし、年間パスを買って毎週日曜日に行ってるんだ。夜ご飯だけ食べに、ディズニー行くこともある。行ったら毎度毎度、お土産とか小物とか食器買っちゃうしさ…

私はまたもやビックリ仰天。お金ないってそーゆうこと?!贅沢しすぎて貧乏?!本末転倒すぎる。
私:佐々木くんがお昼に何を食べてるのか奥様知ってんの?
佐々木くん:作ってって言う前に、料理できない奴だからさ、、、

いやいや、ちょっと待て。私だって別に料理が得意なわけじゃない。でも、結婚したらやらざるを得ないもんだと思っていた。だって、毎日外食するお金なんて、ないもん。

佐々木くんは、来る日も来る日もお豆腐を食べていた。隣でお弁当を食べる私に、佐々木くんが言う。
佐々木くん:あ~、おれ、李ちゃんと結婚すればよかった。
私を飯炊き係だと思っているな。冗談じゃない。お断りじゃ。

それから1年も経たないうちに、佐々木くんはどうやら離婚したらしい。私は前職を辞めたが、今でもたまに佐々木くんとごはんに行く。
佐々木くん:独身だとお金使うところがないんだよなぁ!
そう言って佐々木くんは高そうな中華料理屋さんで毎度ごちそうしてくれる。